Dairy for Paranoid

MARCH 2004

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JANUARY  FEBRUARY


04.3.31 Wed.  腐乱未遂                 4.1 5:03
 午前中に電話取材から起こした原稿を送り、午後は25日に提出し、昨日にダメ出しの出た原稿の修正。修正は夜までかかっちゃいましたが。まあ、とりあえず終わったのでよし!

 午前中と午後の原稿書きの合間に、大家さんに家賃を持っていきました。そこで、ずっと気になっていたことを尋ねてみました。
 「あの〜、私の隣の部屋の人っていらっしゃるんですか?」。
 実は昨年12月からずっとずっと気になっていたのです。階下の郵便受けはチラシでいっぱい、部屋のドアの郵便受けからもいくつものチラシが飛び出していて、取られた気配なし。ついでに、以前は1カ月に1回くらいは廊下で会ったり、日曜日などベランダから洗濯機の音が聞こえたりしていたのですが、それもなくなり……。
 12月から2月初旬までは、もし学生さんだったら、スキー場での長期バイトとか実家に帰ってる可能性もあるよな〜と思っていたのですが。2月下旬になっても、3月になっても郵便受けは山盛りのまま。

 気になるじゃないですか! このご時世、こっそり隣で何か起こっていたらヤじゃないですか! ひそやかにフランでたりしたら、すごくイヤだ。実際、私の知り合いに、友人がマンションの部屋でフランでた人や、人がフランでた部屋の隣に住んでいて3カ月も気づかなかった強者がいるんだ! 決してありえない話じゃないんですよ(そして、一人暮らしの危険をいうなら、私だって他人事じゃない)。
 ですから、正しくはこうです。「あの〜、私の隣の部屋の人って(生きて)いらっしゃるんですか?」。

 なんだか他人様のことを詮索するようでイヤだったのですが。でもフランな考えにはまるのもイヤなので、意を決して聞いてみました。そうしたら、「ここ2週間ほどニューヨークに行かれてたみたいですが、今日戻って来られましたよ」とのこと。「ニューヨーク?」「アパレル関係にお勤めで、買い付けにあちらこちら行かれているようですね」「ああ、なるほど」。
 しょっちゅう部屋を空けているのなら、人の気配が感じられなかったのはもっともかもしれません。ついでに、その隣の、毎朝規則正しく出かけ、ごくたまに夜会う時もだいたい同じ時間帯という青年は会社員とか。私の部屋の上階の、丑三つ時に洗濯するのが好きな女性は歌手の卵さんとか。だいぶ私の部屋周辺にお住まいの方についてわかってきました。私も加えたら、けっこうバラエティーに富んだ職種の住むマンションかも。それこそドラマのネタになりそうです(笑)。『めぞん一刻』的「ひとつの建物の中の人間模様」って、ドラマのテーマとしてはありきたりだけど、おもしろいですよね。
 ……つーか、部屋に帰ってきたら、チラシ類片づけてくれよ。無駄な心配しちゃうじゃん。

 そんなわけで、「世田谷怪奇マンション」はどんどん普通のマンションになりつつあります(それが当たり前)。


 夜、事務所に行った帰りに「週刊少年マガジン」買いました。『GetBackers -奪還屋- アーリーデイズ』のために! ああ、表紙のふたりが眩しいよ!! そして読後の結論は……しばらく雑誌で追っかけてしまいそうだ(笑)。16歳のわりには幼い感じの二人がかわいいかわいいですv
 銀河鉄道999も飛んでたしな〜。蛮ちゃん、あなた、何年生まれよ。なぜあなたがゴダ○ゴの「THE GALAXY EXPRESS 999」を歌えるのか、おばさん、ちょっと不思議だわ。魔女だから4年に1歳しか年取らないとかいわないでね(<オリンピックか!)

04.3.30 Tue.  自虐な買い物               4.1 4:25
 2月に緊急ゴーストライターをした本をやっと見つけました。3月に出ると聞いていたので、しばらくは本屋に行く度に探していたのですが。ここのところバタバタしていて忘れてました(苦笑)。
 昨日たまたま思いだしてネットで検索してみたら、出版社のサイトに「発売中」と出ていたので、本屋に寄ってみました。しかし下北沢の書店にも、最寄り駅の大きめの本屋にも並んでいません。3軒目の本屋さんで「○○という本が出ているはずなのですが、置いていらっしゃいますか?」と聞いたら、怪訝な顔をされました。でも著者名を言ったら、「あ、それ、今日入ったとこなんです」って倉庫から出してきてくださいました。
 もちろん買いましたよ。ゴーストライターにも見本誌をくださるのか、わからなかったので。それに、ちょっとイロイロ気になる本ではありましたから。
 ついでにこれって「政府刊行物」だったんだ。知らなかったよ。とにかく無事に出版されたのを確認して、ほっとしました。すっごいスケジュールだったもんなあ(遠い目)。

 しかし、なぜこんなにものすごい雨の日にわざわざ本を探してるんだかわかりません>雑文堂さん。思い立ったが吉日にもほどがあるだろう。本屋さんの軒先に雨よけのビニールが吊ってあったのですが、風を伴ったものすごい雨がシートを捲り上げて侵入し、外に出してあった雑誌類を濡らしていました。店員さんが慌てて店内に取り込んでいましたが、あれ、もう売り物にならないのでは? 夜22時過ぎのお話。


 下北沢のショッピングビル内の本屋の隣のCDショップから「traveling」が延々かかっていました。聞くともなしに聞きながら本を探しているうちにトランス状態に陥ったらしく、はっと気がつけば、『Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1』宇多田ヒカルと『メリッサ』ポルノグラフィティのCDを持ってレジに立っていました。ぎゃっ! この金のないときに……。自虐の気があるのか、私は!
 いやまあ、宇多田ヒカルの歌は新曲が出るたび気になっていて、でもいずれベストアルバム的なものが出るはずと今まで買い控えていましたから、いつか必ず買っていたでしょう。帰宅するなり、ヘビーローテーションに突入してますよ。……あまりにもニーズにジャストフィットで、そこはかとなくメーカーの罠に引っ掛かっている気がする。くそう(苦笑)。
 『メリッサ』は衝動買い。『鋼の錬金術師』のオープニングがラルクに変わっちゃって、耳に馴染んだ曲が聞けずにいたのが寂しかったのでしょうか。ついうっかり手に取っていました。聞いてみたら、「メリッサ」はもちろんカップリングの2曲も好みで、実は私、ポルノグラフィティ、好きなのかもしれません。ううむ。

04.3.29 Mon.  電話取材                 4.1 3:48
 ありそうで、不思議に今までなかった「電話取材」の仕事。この1カ月で立て続けに2件受けました。1件は北九州市、もう1件は鳥取県境港市。
 当然といえば当然のことながら、電話取材先は直接に行けないくらいの遠方ではあるわけです。でも電話代、原稿料に込み込みなんだよなあ。遠距離になるほど、通話時間が長くなるほど収入が減っていくという、ちょっと微笑ましいシステムだったりして。まあ、それはともかく。

 本日の電話取材は境港の方。普通の会社員で、私たちの言葉でいう「シロウトさん」(取材に慣れていない方のこと)です。14時からお時間を空けていただいているということで、その時間ジャストに電話をかけなくてはなりません。
 その前にクライアントから送られてきたプロフィール資料や会社のホームページなどで、その方の仕事や会社あるいは地域的な特徴を調べて、質問をまとめておかなくてはなりません。プロフィールシートが不備の場合は、まずそれをお聞きしてから、その場で質問を考えてインタビューを始めなければなりません。
 「クロウトさん」相手で、しかも対面しながらでもインタビューは難しいものです。それを、おそらくは緊張されていて、質問に対する答えも咄嗟には口に出ないであろう取材慣れしていない方に、ましてや電話で。うわあ。
 答えやすい質問から始めて、まずリラックスしてもらう。質問はできるだけ具体的に。抽象的なことを聞く場合は、答えの例などを挙げる。絶対に途中で話をさえぎらない。黙り込まれても、こちらからはあまり言葉を重ねず、考えていただく時間を十分にとる。

 そんな感じで電話取材2回目を終えました。この原稿の締切りは31日午前中です。

04.3.28 Sun.  クリエイター誌のステイタス        4.2 4:02
 21時から事務所で編集会議。お題は1月からずうーっと引っ張っている案件について。そもそもこの雑誌のために東京に呼ばれた私にとって、コレはかなり深刻な問題で。真面目に今後の身のふり方を考えたりもしたのですが(考える間もなく、怒濤のゴーストとダルメシアンとバトーに吹っ飛ばされちゃったけどな。でも、あのときこんなふうに仕事が来なかったら、自信喪失、ゲシュタルト崩壊してたかも。なんといっても、私には初めての経験だもん)。
 事ここに至って、結論は「まあ、これからの交渉次第ですね」。どうなっていくのか、こればっかりは見えないなあ。
 いずれにせよ、そろそろこの件は公式に出版社サイトなどで発表してほしい気がする。それとも、このままうやむやかな(苦笑)。
 「王様の耳はロバの耳ーっ!!」。ああ、すっきり(するかいっ!)。


 学研から「Megami Creators メガミ・クリエイターズ」という雑誌が発行されたのですね。以前から「月刊Comickers コミッカーズ」(美術出版社)や「季刊エス」(飛鳥新社)、「キャラクタデザイナー」(ワークスコーポレーション)など、クリエイターに焦点をあてた雑誌は多かったのですが、また1冊増えましたか? 気がつけば書店に置かれてるといった感じだった「日経キャラクターズ!」(日経BP)も3月25日から奇数月隔月刊の雑誌になりましたし。

 「完成した作品で評価されるべきだ」という意見に、私も賛成です。予算がどれだけ少なかったかとか、スポンサーがどれだけ我が侭を言ったかとか、制作過程がどれだけ厳しかったかとか、そんなこと、その作品を見せられる側には関係ありません。完成されたソレがすべてです。だから、クリエイター雑誌は「クリエイターの言い訳」を掲載する雑誌であってはいけないと思っています。

 でも、完成された作品について、「このキャラクターって何から思いついたんだろう」「いったい何を考えたら、こういうモノが生まれてくるんだろう」「このイラストって、古典絵画の手法を取り入れてるみたいだけど、描き手さんはそういう方面に興味のある方?」って、けっこう疑問が生まれてくるんですね。
 クリエイターにそういう疑問をぶつけてみるということは、作品のプラスアルファの魅力を開陳することになるかもしれませんが、むしろ、クリエイターご本人の懐の深さや広さを見せることになるのではないかと思います。モノを作る上で必要な専門的な知識のほかに、どれだけ「遊び」の部分があるか。自動車が真直ぐ走行するには、ステアリングに「遊び」が必要なように、創造の道を走り抜けるためには「遊び」すなわち「余裕」が必要なのだ、と。今まで私がインタビューしてきたクリエイターさんには、たしかに「余裕」や「向上心」(まだモノが入る余地)を感じました。
 ある意味、クリエイターさんに言い訳させるどころか、怖がられるような雑誌が「クリエイター雑誌」の到達点ではないかと思うのですが。「真面目」が敬遠されるご時世には、ウケないかもしれませんね(笑)。

04.3.27 Sat.  その色、プルシャン・ブルー        4.2 4:48
 TVで『美の巨人たち』を観ました。本日のお題は「プルシャン・ブルー」。
 実は、かなり長い間、「ペルシャン・ブルー」だと思っていた恥ずかしい過去があります(笑)。「ペルシアの青」ではなく、「プロシアの青」。日本に持ち込まれたときに「ヘロリン」と呼ばれた名のとおり、「ベルリン」すなわちプロシアで生まれた色です。

 それまで「青」は貴重な色でした。「青」の絵の具はラピス・ラズリを砕いて作られましたが、その原石はアフガニスタンとチリでしか取れません。「遥かな海を越えてきた青」という意味で、ラピス・ラズリから作られた「青」は「ウルトラマリン・ブルー」と呼ばれました。その稀少さから高価だった「ウルトラマリン・ブルー」は聖母や聖人などの衣装にしか使われませんでした。「ウルトラマリン・ブルー」はだから高貴な色でもありました。

 18世紀初頭、「青」に革命が訪れます。「プルシャン・ブルー」の誕生です。
 ある日、ベルリンの染色業者が赤色を作っていたところ、薬品が足りなくなったので、友人の錬金術師に動物性アルカリ成分を借りに行きました。それを入れると、あら不思議。「赤」ができるはずが、「青」に変わってしまいました。借りたアルカリが腐っていたのです。
 安価な「プルシャン・ブルー」は、高価な「ウルトラマリン・ブルー」に代わって、瞬時にヨーロッパ絵画界を席巻しました。

 「プルシャン・ブルー」が日本に輸入され、描かれたのが葛飾北斎の「富嶽三十六景」。中でも特に「プルシャン・ブルー」の美しさが効いているのが「凱風快晴」(通称「赤富士」)です。

 北斎の「プルシャン・ブルー」に惹かれたのが、ヴァン・ゴッホ。しかし彼の「プルシャン・ブルー」は、北斎のような、絵の具を薄く伸ばすことで得られる明るい青ではなく、厚塗りに厚塗りを重ねた黒に近い青でした。

 そしてこの「プルシャン・ブルー」は、ピカソの「青の時代」の作品へと受け継がれていきます。


 今はもっと扱いやすい「青」が増えたことで、見向きもされなくなった「プルシャン・ブルー」。私が小学生や中学生のころに買い与えられた絵の具箱には必ず「プルシャン・ブルー」が入っていましたが、今はどうなのでしょう。
 実際、使いにくい色だった印象があります。厚く塗ると真っ黒になり、ちょっとの水加減で藍色の暗さからセルリアン・ブルーの明るさまで、とにかく色調も明度も一定しない「青」でした。背景や広い面積の衣装などで、グラデーションを楽しむのに塗るにはいい色でしたが、あまりに重ね過ぎるとまた黒くなるという、神経を使う色だったのを覚えています。
 あと、番組でも言っていましたが、他の色と混ぜることのできない色でした。混ぜると、どの色も「濁色」になっちゃうんですね。白と混ぜても、結局「プルシャン・ブルー」を薄く塗ったときの色とあまり変わらないので、混ぜる必要なし。
 私の絵の具箱では、あまり減らないチューブのひとつだったように思います。

 「色」の歴史や、それが含む意味もなかなかおもしろいものがあります。
 そして、例えば文学の修辞学で、作家が無意識あるいは意識的に多用している単語の分析から、作家の性格や環境、作品を書いた当時に何から影響を受けていたかを推量することができるように、画家がその作品で多用する色からも、「隠されたメッセージ」を受け取ることができます。
 これまでは、画面に描かれた事物から、「神話」や「聖書」あるいは土俗的な言い伝えを鑑みて、絵が表わす「メッセージ」を読み取ってきました。技術が進んで、画家が描いた当時の色彩を再現できるようになった今こそ、今度は色で分析する領域も活性するのではないかと思うのですが。どうでしょう。
 そんなことを考えながら、ぼーっと「プルシャン・ブルー」の世界を眺めていました。

04.3.26 Fri.  幸せな日々                4.1 3:14
 本日の打ち合せで、お声がけした書き手さん5人さま、すべてノベルズの執筆にご参加いただけることになりました! 絵描きさん3人さまもOKで、ああ、もうよかった。本当によかった!
 ちょっとカミサマの存在を信じてもいいかなって思う今日このごろです(本当に天中殺から抜けてたのか、私)。

 早速に書き手さんからはネタ出しもいただいて、どれも興味をそそられるものばかり。こちらが想像していたネタとはまったく違うところから発想いただいているのが、すごい! 皆さま、さすがに物語を作ってこられた方ばかり。よくネタの在り処をご存じでいらっしゃいます。
 私もこのノベルズの編集を引き受けたからには、かなりのところまでは(冷静に)ついていく自信はありましたが、もういただいたネタだけで萌えてしまってダメだ。これでプロットいただいたら、萌え死ぬかもしれない。あとはまかせた……>I先輩。

 そんな感じで、毎日楽しく暮らしております。そろそろなにか来そうな気配がしますがね。なにかガツンとショックを受けそうなことがね(<どうしても幸せに慣れない哀れなヤツ)。

04.3.25 Thu.  香水の匂いは苦手です           4.2 23:14
 本日は、「匂い」とか「香り」とか「臭覚の原理」とか蓄積した知識を原稿にまとめて送る日です。途中、ちょっと別件が入ったりましたが、とりあえず終了、しゅうりょう〜!

 原稿を書く過程で知ってしまった、どうでもいいけど知っておくと何か役に立つかもしれない、お知恵3つ。
 ●ペットボトルの横にハチが通るくらいの窓を開け、3分の1くらいの深さに砂糖水と酢を入れて、栓をする。これを庭先に置いておくと、酢の匂いに集まったハチが砂糖水に溺れるので、ハチを退治できる。
 ●ナメクジはビールの匂いを好むので、ナメクジの通り道にビールを入れたコップを置くと、中に入って溺れてしまう。ナメクジ退治はビールが有効!
 ●タマネギは、切る前に冷蔵庫で冷やしておくと、硫化アリルの量が減るため涙が出にくくなる。

 ほかにも驚きの発見があったのですが、それは書いちゃったから、記事を読んでください。4月16日発売の「monoマガジン 5-2号」の「蘊蓄の箪笥」に掲載予定です。

04.3.24 Wed.  16年ぶりの再会             4.2 5:51
 『リュオン』佐々木淳子(幻冬舎/バーズコミックス スペシャル)を入手しました。帯にあるように、「やっと、会えた…」の心境です。
 マンガを読みはじめた大学時代に、まず『ブレーメン5』にハマり、『那由他』、『ダークグリーン』、『青い竜の谷』、『アイン・ラーガ』と追いかけていたのですが、いつしか見かけなくなってしまったマンガ家さんの一人です。
 どの作品もSFテイスト。そしてこの方ほど、壮大に広がりに広がった風呂敷を、論理的に破綻させずに畳み込むのが上手な方に、今のところ、私はお目にかかっていません。
 特に「すごい!」と思ったのが『霧ではじまる日』。同じ24時間が延々と繰り返されるという「閉鎖した時間=タイムターン」モノです。ビル・マーレー主演の映画『恋はデジャ・ヴ』(原題『Groundhog Day』)も、主人公が同じ1日を繰り返すというタイムターンSFの秀作だと思いますが、それをマンガという手法で、それも中編でやってしまうのが佐々木淳子の力量!

 少女マンガのタッチで、スペースフロンティアもの(『ブレーメン5』)から、精神と現実の構造論もの(『ダークグリーン』)、ロストワールドもの(『青い竜の谷』)、超能力もの(『那由他』)、タイムトリップものなど、SFが目指したあらゆるテーマを制覇した数少ないマンガ家さんだと思います。

 ただまあ、惜しむらくは、風呂敷の畳まれ方が論理的すぎて、キャラクター嗜好で追っかけていると「え〜!」という結果にままなるという(苦笑)。基本的に少女マンガの読者はキャラ萌え要素が強いので、それがハッピーエンドであれ、カタルシスであれ、ほぼ予定調和を予想しているところがあります。それを、SFの理論としては整合しているのだけど、それまでのキャラクターの思惑も人生?もすべてを無視するような形で結着がついてしまうと、読者はなんとなく「あれ〜」と思ってしまうのですね。
 私は佐々木淳子の大半の長編作品について、多くの名場面を記憶していますが、肝心のエンディングを思い出せないものがけっこうあります。そういう部分がズレていたんだなあと思います。

 長編では内容がいちばん私的に好みだった『ブレーメン5』のエンディングさえ、うむむと思ってしまいます。ずっと気になっていたタウロとミザロの結着が見られてよかったけど、個人のアイデンティティの確立のシステムを語るにはちょっと壮大すぎたかな〜とか(揺れるタウロくんがかわいかったけどね。あとジェダIIは壊さないでほしかったよ〜(泣))。

 『那由他』もおもしろかったですね。あれはきれいな終わり方をしたと思います。新たな世界に踏み出す那由他+リョータロー+キロの姿が美しかったです。そうそう、那由他と鏡像になったリョータローの融合シーンは、今でも「私の選ぶ名場面」のひとつです。「ふたりはひとりずつで寂しかったから、ひとつになったけど、ひとつになった魂はやはりひとりで、寂しさは変わらなかった」。うわあ、書いていても泣けてくる。

 いちばんもにょったのは、『ダークグリーン』のエンディング。「ええ、マジ!? それってリュオンはどうなるの? R-ドリームにたった独り残されるわけ!?」みたいな。えっらい憤慨した覚えがあります(笑)。

 1988年2月の『ダークグリーン』連載終了から16年の月日が流れ、『リュオン』登場!
 ああ、もうよかった。北斗としてはよくないのかもしれないけど。そして甘過ぎる結末なのかもしれないけど。私はこういう結末が見たかった! ありがとう、佐々木先生! やっと私の『ダークグリーン』が終わりました。やっぱりおトーさんは息子の面倒をみてしかるべき! 息子のほうが強いけど(笑)。
 そして、北斗の回想で冷戦の終結、環境問題の常識化、新しい国々の誕生と聞いて、しみじみ16年の長さを感じました。21世紀の今もなくならない闘い。R-ドリームから「国」という概念のゼルが消える日は来るのでしょうか。

 そして『ターン』と『ヒュウ』。こ、こんな形で『那由他』と『ブレーメン5』は繋がっていたのかー!(笑) ドクター・バローで、今度は『那由他』と『ダークグリーン』が繋がっちゃうし。すごい、すごい!
 久々に懐かしい面々に会えました。タウロやユズ、そして那由他とリョータローとキロも。

 北原文野の<P-シリーズ>といい、佐々木淳子の『リュオン』とか、それこそ「月刊ミステリーボニータ」掲載の『やじきた学園道中記』とか、『やさしい悪魔の物語』とか、『新マジシャン』とか、なにかが回帰する時期なのかもしれません。
 まあ、学生時代にそういった作品を読んで感激した読者が、年をとって企画力や決定権をもつ編集者になり、往年の名作を再び世に問うているという面があることはあるのですが。それだけではない、なにか時代の求めを感じます。

 リュオン曰く、「時間って面白いね」。うん、ほんとに。

04.3.23 Tue.  見えてきました              3.24 1:53
 ご案内メールをさしあげた書き手さん5名さま、描き手さん3名さまのうち、描き手さん1名さま以外から全員お返事をいただきました。書き手さん1名さまは一度お会いしましょうということで、保留。あとの方からは色よい返事がいただけました。ああ、よかった〜。
 まだまだ描き手さんにはお声がけしていかなければ、なのですが。他の本の編集作業や原稿の締切りもあるので、合間を見ながらぼちぼちと送らせていただきます。
 自分が「この方に」と思った方々が揃ってこられて、なんだかドキドキしています。どんなノベルズシリーズができるのか、ほんとうに楽しみですv


 本日は事務所のスタッフと、平日のみわずか3時間しか開店しないというモツ焼き屋に行きました。もの珍しさについていったのですが、考えてみたら、私、内臓系、ダメやん。店内はカウンター8席のみ。ここで「苦手」と白状するわけにもいかず、食べられそうな「ネギマ」とかお願いしたのですが。
 ……あら、けっこうイケる。
 なんだかんだで「ハツ」「タン」「シロ」「レバーちょっと焼き」などをいただきました。「マスター! レバちょ塩で1本!」とか頼むのですよ。この「レバちょ塩」がすんごくおいしかったです。1本から頼めて、すべて1本100円。串に刺してある固まりが大きいので、ひとり6本も食べれば、かなり食べた気分になります。モツだから、それなりに重量感がありますし。
 モツ独特の臭みが苦手の原因なのですが、あんまり感じませんでした。新鮮ってことなのでしょう。たまには変わったものもいいです。おいしければ(笑)。そしてビール大ビン1本、ぺろぺろっと飲んじゃいました(<まだ仕事あるんですよ、雑文堂さん!)。

 25日締切りの原稿を、只今やっつけ中。「匂い」とか「香り」とか「臭覚の原理」とかの知識を蓄積中です。ほんと原稿を書く度に妙な知識が増えるのですが、書き終わった瞬間にすべて忘れます。いつか同じテーマで原稿依頼が来たら、また最初から調べなおしですよ。効率悪いな〜。メモリ増設できたらいいのですけどね、私の脳!
 作業途中ですが、眠いので(たぶんビールのせい)、とりあえず『PeaceM○ker鐵』を観たら寝ます。

04.3.22 Mon.  いかりや長介訃報             3.24 6:37
 いかりや長介が20日に死去されていたのですね。享年72歳。今朝のワイドショーを観るまで知りませんでした。
 『8時だヨ! 全員集合』は『天才バカボン』と並んで、親が絶対に観せてくれなかった番組です。理由は「観たらアホになるから」。子どもだった私は「ふ〜ん。そうなんだ」と思っていました(笑)。
 それまでアニメか何かを観ていて、8時の時報が鳴って、TVから「はちじだよ!」の声が聞こえたとたん、プチンとスイッチを切られた。そんなシーンばかり思い出します。
 だから、いかりや氏は、私には俳優さんのイメージのほうが強いのです。

 俳優としてのいかりや氏を初めて観たときは、俳優としての片岡鶴太郎を初めて観たときと同じような違和感を感じました。観たことはなくても、いかりや長介がザ・ドリフターズのリーダーでコメディアンということは知っていましたから。なぜ、コメディアンで名を挙げた人を、シリアスなドラマに配するのだろうと不思議に思った記憶があります。
 でも『踊る大捜査線 THE MOVIE』をきちんと観たとき、「ああ、この和久というキャラクターは、長さんでないとダメだな」と思いました。和久の役どころに当てはめられる役者さんは他にも何人か思いつきますが。でも、つい先年まで警察組織で現役バリバリで働いていたものが、今はご隠居ならぬ指導員として勤めているという微妙な立場からくる情の表現は、長年グループのリーダーとして同輩を束ね、後輩や人を育ててきた人ならではの、厳しさと包容力と頑固さを持ち合わせたいかりや氏でないと、出せなかったものだろうなあと思います。

 今年は「ザ・ドリフターズ結成40年」とのことで、深夜番組『孝太郎が行く』(小泉孝太郎が著名人を訪ね、インタビューする番組)で、ドリフのメンバーを1回(30分)ひとりずつインタビューしていました。
 その最後の回がいかりや氏で、小泉孝太郎と鍋をつつきながら、ドリフのことやリーダーとしての自分のこと、俳優としての自分のことなどを話しておられました。
 それまでの回で、高木ブーや志村けんらメンバーひとりひとりがいかりや氏のことを話して、その最後がいかりや氏本人という構成。メンバーそれぞれのいかりや氏の印象が、インタビューの間に氏の身体に集束していくような、そんな心持ちを味わいました。
 ときおり声がつまったり、かすれることがあって、しんどそうだなあと思いました。話題の中に入院された話なども出ていましたが、「これからは、今までできなかったことをやるつもりだ」と力強く言われていました。
 番組を見てほんの3ヶ月くらいしか経っていないのですが(ちょっと記憶があやふや)、こんなに突然に訃報を聞くことになるなんて。
 このインタビュー番組をたまたま聞いていてよかった。人気を維持するために必要な厳しさ、リーダーとしていつも自分を律していなければならなかった緊張感などを知り、いかりや氏やドリフにもっていた印象が変わりました。……子どものころに刷り込まれた先入観がやっと払拭された感じで。
 ご冥福をお祈りいたします。

04.3.21 Sun.  HARUコミにて               3.24 1:15
 HARUコミに行ってきました。仕事でお会いしたい方がいらしたのと、調べておきたいことがあったので出かけたのですが。
 ……なんで、この入場証代わりのパンフレットってこんなに重いんやー! この重ささえなかったら、もうちょっと(『GetB○ckers -奪還屋-』の)同人誌買えたのにーっ!!(<だから、何しに行ってるんや、と)。
 Comic Cityに来たのは初めてだったのですが、同じ同人誌即売会でもComic Market(コミケ)とはまた趣が違いますね。コスプレが禁止だからか、ちょっと華やかさに欠ける感じ。コミケがなんとなくワイワイとしたお祭りなら、HARUコミは純粋に本の即売会という感じでした。それでも、ピンクのフリフリフワフワのお洋服を着たお嬢さんとかいたけど。
 今回は、特に壁サークルに限らず、列ができているスペースを覗いてまわりました。しっかり行列に並んだところもありますよ。「ここが最後尾です」というプラカードを持ったりしてね(苦笑)。まあ、これも編集の仕事の一環ってことです。ふふふ。
 そうやって手に入れた同人誌のほとんどがボーイズラブ(BL)のきつめのエロだったりして、ガーン!!! 文章ならまだいい。しかし、さすがにマンガでモロ描きはダメだ。脳が拒否反応を起こすよ〜。「行列のできるスペース」=「BLのハードなエロ描き同人さん」でファイナルアンサー?(苦笑)


 入場証パンフレットと戦利品があまりに重かったので、一度事務所に戻って荷物を置いて、西武新宿駅で所長と合流しました。今度はイラストレーターさんのお宅へ、画集掲載用のイラストを受け取りに行きます。土曜日に雨天順延になった件です。
 ニュー○イプ編集部にいたころに原稿の受け取りやイベントなどで何度かお会いして以来、この日が実に13年ぶりくらいの再会。全然変わっていらっしゃらなくてびっくりしました。やはり第一線で活躍していらっしゃる方は、なかなか加齢の疲れが顕われないのだなと感心。やはり「張り」というのは、人生通じて必要ですね。
 締切りを抱えていらっしゃるところにお邪魔して、1時間ほどもしゃべってました。キャラクターデザインの上がりを今か今かと待っておられるメーカーの担当者さん、ごめんなさい。締切りに遅れたら、所長と私のせい、かもしれません(笑)。

 事務所に戻ってから、画稿の運搬のため車を出してくださった所長の弟さんと所長とスタッフの4人で、ベトナム料理を食べに行きました。世田谷線の上町駅からちょっと歩いたところにあるサイゴンというお店。サイゴンといいながら、ベトナム料理以外にカレーやチヂミやタンドリーチキンなんかもあるのですが。なので、看板には「亜細亜料理」と書かれています(笑)。
 生春巻き、ベトナム風サラダ(いろいろな具を各自レタスで巻いて食べる)、焼き海老餃子、チキンのカシューナッツクリーム漬け焼き、ベトナム野菜と豚肉炒め、フォー、カレー&ナン、エビセンなどなど、出てくる料理がどれもこれも美味でした。コリアンダーの香りとともにクセになりそうな味です。場所を覚えておいて、また行きましょう。

04.3.20 Sat.  世田谷怪奇マンション           3.24 7:35
 今住んでいるマンションの1階から2階への階段の踊り場に、タライやらハンガーやらクツ下片方やらミュール片方やらふとんを干すときの押さえ器具1コやら、中途半端なものがよく置かれています。見かけるたびに、「誰かのイタズラ? それとも何かのマジナイ?(ほら、風水関係とかさ)」と思っていました。それも、たいてい2日ほどもすれば、姿を消すのです。怪しいのです。特にここ2週間ほどは、頻繁にいろいろなものが出現しては、消えていくのです。

 いよいよ「世田谷怪奇マンション」としてどこかに投書しようかと思っていた矢先、それは起こりました。

 雨降りの今日。予定ではイラストレーターさんのところへ画稿を引き取りに行くはずだったのですが、雨でイラストが濡れる危険性があるので、明日に延期となりました。
 結果、明日は1日出かけることになったので、今日のうちに洗濯をしておこうとベランダの窓を開けました。すると、ベランダに置きっぱなしにしていたサンダルが片方ありません。「?」と思いながら、エアコンの室外機の下や洗濯機の裏を探しますが見つかりません。こうなったら、可能性はひとつ。ここ数日吹き荒れていた強風に煽られて、1階の大家さんの家の庭に落ちたか、その向こうの駐車場まで飛ばされたか。ベランダの柵から乗り出して、下の大家さんの庭を眺めましたが見当たりません。「まあ、買いなおせばいいか」と思い、玄関から夏用サンダルを持って来て、洗濯をすませたのでした。

 その後、事務所に行こうと階段を降りていたら、「怪しいもの出現場」こと階段の踊り場にまた何かが出現しています。見覚えのあるソレは、げっ、私のサンダル片方〜!? なんでこんなところに!?
 ここでようやく「怪しいもの出現場」のナゾが解明されたのでした。大家さんの庭に落下したマンションの住人の持ち物を、大家さんが拾って置いておいてくれていたのです。そして、住人が自分の所持品を引き取っていたのでした。あはははは。
 もちろん、私もサンダルの片方を持って、即行、自分の部屋へ引き返し、玄関に放り込んでおきました。……私のモノと判明していないでしょうが、かなり恥ずかしいものがありますわね。


 事務所では、届いたノベルズのプロットについて打ち合せ。もうひとりの担当者(女性です)と、「こういう展開になったら理想だよね」「でも、それじゃあ、向こう(クライアント)が欲しがっているものにならないまま、話、終わっちゃわない? ここで彼と彼がこうならないと」「じゃあ、彼は彼に気があるんだけど、彼は彼より彼が好きで応えてくれないとか」「え〜、なんか三角関係どころか一直線になっちゃわない、それ?」「え、そうかな〜。彼は表には出さないけど、彼のことを気にしてるのよ。で、彼に何かあったときに、それが出ちゃったりするの」「うわ、それってありがち〜」「でも、萌えの基本でしょが」……自分で言っててなんだけど、「基本」なのか……。
 いや、たしか我々は、このプロットの、企画としての妥当性を打ち合せしていたはずなのだが、どうしてそこでキャラ萌え妄想一直線にはまっておるのだ。
 狭い事務所の中、それを傍で聞かざるをえない所長(男性です)の居心地悪そうなようすがなんとも。「好き」にかかる主語と目的語がすべて男性名の会話なんて、今まで事務所ではなかったことですからね(笑)。

 そして我々の萌え話は留まるところを知らず。「子どもとか、ちょっと弱っちく見える主人公が、強力で強大な妖怪を手なづけて、守り守られするのって好み〜」と『十○国記』の話になり、「やはりあれだ、悪霊に乗っ取られたかつて尊敬しほのかに愛してもいた人を、愛ゆえに倒すのがいいんじゃない」って、なぜか『帝都○戦』の加藤に行くあたりが、もうどうしようもないというかなんというか。「萌え」の連想ゲームを繰り広げているあたりで、アカン感じです。

 すみません。みなさまの担当をさせていただくのは、こ〜ゆ〜二人です。とりあえず先に謝っておきます。>限定5名さま

04.3.17 Wed.  桜花咲くころ               3.18 6:23
 18日にさしかかった深夜、帰宅途中の桜並木がちらほらと花色に色づいていました。予報より1日早く、桜、開花です。夜の静寂に浮かび上がる桜花は、清楚にして妖艶という相容れないはずのふたつの性を合わせ持ち、現実と幽玄の境に不思議に存在しています。
 平安の世の人々が、桜が疫病を運ぶと信じて「花鎮め」の祀りを施したのも理解できる気がします。毎年、その「清冽な魔性」に、こんなにも惹かれている自分を感じますから。


 本日の事務所は『GUNGRAVE O.D』三昧でございました。PS2のアクションゲームです。
 前作のゲーム『GUNGRAVE』のムック本を事務所で作ったので(私は参加していません)、なんとなく興味をもって深夜放映中のアニメ『GUNGRAVE』を観ていました。その新作ゲームということで、事務所のスタッフがプレイするのを傍で眺めていたのです。
 「死人」であるビヨンド・ザ・グレイヴが、両手にケルベロスというコンクリートも鉄板もボコる大型銃、背中に、敵をなぎ倒し、ランチャーも跳ね返す強力な「ぶんまわす」武器である棺桶を背負って、ガンアクションを繰り広げるのですが。
 うわ、目が回るう〜。
 そうでなくても、グレイヴったら、銃を乱射しながら踊るというワザをかましてくれるのに(笑)、画面もぐるぐる回るので、4ステージほども眺めていたらすっかり頭がくるくるしてしまいました。

 前作はもっと3D画面が凝っていた気がしますが、今作は画面の重さや暗さが緩和されてずっと見やすくなりました。グレイヴも、前作はなんだか踊る棒人形のような形態であまり人として認識できなかったのですが、今作はしっかりキャラクターとして認識できましたし。もちろん、アニメのブランドン・ヒートの影響があることは否めませんけど。ゲーム中、グレイヴがCOOLなアクションをしたり、大業を放つと「グレイヴ〜v」、ブルドーザーになぶられるのを見て「グレイヴーッ!(くそう、憎いぜ、ブルドーザー!!)」なんて一喜一憂してました(笑)。
 まあ、前作のグリグリ描き込まれた映像も、重厚感や退廃的な雰囲気が捨てがたいのですけどね。

 相変わらず、他人様がプレイしているのを眺めるだけです。それでも十分おもしろいのは、メンバーによってプレイの癖があるからですね。乱射乱射でグレイヴをこれでもかと踊らせる人がいれば、接近戦にもち込んで一撃必殺で敵を倒していく人もいて、それぞれ味わいがあります(笑)。


 頭がグレイヴvでいっぱいになっちゃったので、肝心の仕事ができませんでした(こらこら)。
 そうそう。件のお詫びメールに、たいへん丁重な返信をいただき、驚きました。もう恐縮至極で、デスクトップに映るメール文に何度も頭を下げてしまいました。なんとしてでも機会をつかまえて、いずれ取材をさせていただく所存です。『百花○園の悲劇』からファンでした。『十二○記』や『探偵玄居煉○郎 からくり座』のお話など、お聞きしたいこと、たくさんたくさんございますので。

04.3.16 Tue.  今だけせ〜ふく気分            3.17 6:42
 なにやら限界だったようです。よう眠れること。「春眠暁を覚えず」をそのまんま体現しております。
 何のせいって、あれですよ! 確定申告!! 徹底して数字を拒否する私の頭に無理を押して計算させるので、倍疲れ〜。ぜいぜい。今回いちばん疲れさせてくれたのは、「基礎控除の38万円」。や、ありがたいのですよ、私のような低所得者に、あの何が算出の根拠なんだかよくわからない38万円の控除は! でもね、なんか今年は完璧に忘れちゃってたんですよ。
 忘れちゃってたのは、基礎控除だけではありません。最初は「所得金額」に必要経費を差っ引いた金額を書くというのを失念していて、書き直し(バカだ)。次は「社会保険料控除」を忘れてて、計算やりなおし(アホだ)。「さあ、これで完璧だ! あ、去年の申告書と比べて、還付金が多いか少ないか見ておこう」って、去年のを引っぱり出して……この38万円って何!? はい、3コマ戻る。
 どうやら私は税金を1銭でも多く払いたいらしいですよ! なんて国民の鑑!! ……しっかり38万円加えて計算しなおしましたけどね。

 そんなわけで、昨日、税務署に行ったときに新しい申告書に書き直さなければならなかったのです。だって、何回も何回も2重線引いて書き直してたら、何が何やら自分でもわからなくなっちゃったんだも〜ん。書いた本人がわからんものが、機械に読み取れるとは思えん!(だいたい国税庁の確定申告ページ、MacOSに対応してないよーな状態だしな。ふふ、日本の頭脳は何かに乗っ取られている)。
 ごめ、そういうわけで、申告書Bを丸まる1セット無駄にして、税金をちみっと無駄にしました。うにゅ。


 そんなやこんなで、疲労度MAXだったのです。ついでに、ここのところ、気合いの入りまくったメールをあちらこちらに送りつけているので(迷惑メールか!?)、余計に。ええと、お詫びのメールとか、ご案内のメールとか。で、そのお返事をドキドキしながら待っちゃったりしています。

 お詫びメールは、前々から取材をお願いしていましたイラストレーターの方に、どうにもならない事情で取材をお断りすることになった事情説明とお詫び。特に私の大好きなイラストレーターさんですから、どう書けば誠意をお伝えできるか、キーを打つ手も止まりがち。誰か私に日本語を教えてたもれーっ!(<あなたの仕事は何よ!? <文章書きです。とほ)。

 ご案内メールのほうは、今のところお送りした方々に色よいお返事をいただいていますので、嬉しいかぎりですv まだ送りきれてないんですけどね。メいっぱいの「愛」と「気合い」がなければ、ご案内メールは書けないのです(いや、マジに。恋文書いてる気分だもん。そして、あながち間違いじゃないし。ぽっ)。
 あとは寄せていただいた信頼や期待を裏切らないように、企画やプロットをきちんとクライアントである出版社に通していく、と。どのような本が誕生するのか、とても楽しみです。うふふふ。


 とか言ってる間に、1月、2月に提出していた企画書が次々通ってしまって、「うそん」な心持ち。自分が企画したもの、事務所の企画で私が参加するもの含めて、4〜7月はほぼ毎月1冊、アニメのムック本や画集の編集作業があるみたいですよ。そのうち2冊は同月発行!? うそ〜ん。
 ありがとう、みんな! ありがとう、某出版社さま!! もうね、がんばりますよ!!! やりますよ!!!! 私が見たい/読みたい本を全国の書店に並べてやる! 目指せ、平積み!! 私の足下に、日本はある!!! はーはっはっはっ!!!!(<戻ってこーい!)

04.3.15 Mon.  確定……深刻               3.17 5:48
 毎年2月から3月15日まで、私の頭上には暗雲がたちこめます。そう、それはか〜くて〜いし〜んこ〜くという名の黒雲。もうね、「確定深刻」っつ〜ね、勢いなんですわ。
 1月からそろそろ「源泉徴収票(支払い証明書)」が届きはじめ、2月になると税務署から申告書が送られてきます。TVをつけますとね、爽やかなお姉さんが「確定申告、私は自分で書きます。申告はお早めに!」とか言うじゃないですか。CMにプレッシャーを感じるなんて、このときだけですよ。ずも〜ん。

 まず、各所から送られてくる(はずの)「源泉徴収票」が、すべて到着しないことには申告できません。だって、私の場合、前年の税金の確定申告とはすなわち「税金還付の申告」なんだもん。ところが肝心の「源泉徴収票」ったら、ひどいときには3月に入ってから到着するですよ。あと、源泉徴収されていない原稿料もありますしね。すべての収入金額を合算して、そこから必要経費や各控除、源泉徴収の税額分を引いて、むにゅむにゅ計算すると、あら不思議、お金が還ってくる、と。
 還付されるんやったら、文句言わんとやれや!という感じですが。だめ、頭が数字を受け付けません。フリーランスになったことを後悔するのは、確定申告のときと「ボーナス払い」の文字を見たときだけよ!


 もう書き直しに書き直し、真っ黒になった申告書をもって、税務署に行きました。現地で新しい申告書に書き直せばいいや〜と思っていたら、「記入所」は長蛇の列ですよ! 今年は13・14日が土・日だったし、16時のこの時間、混んでないほうがおかしいやろ、って思うのが常識ですね。しかし、いかんせん「確定深刻」時の私は正気ではありません。そんな当たり前の事態など、これっぽっちも想定してません。

 待つ間に17時になってしまうと判断した私は、新しい申告書を受け取るなり、税務署から徒歩5分ほどの羽根木公園に向かいました。羽根木公園、梅の美しい公園です。しかし本日は頭上ではなく、地上をなめるように見渡し、空いているベンチをすばやくゲット! 申告書をベンチに置いて、書き写しはじめました。もう一度、電卓を叩いて照合しながらの作業です。集中してます。傍を学生がワイワイしながら通り過ぎようが、カップルがいちゃいちゃしながら通り過ぎようが、好奇心旺盛過ぎるおっちゃんが自転車でちょろちょろ往復しようが気づきもしません(しっかり見てるやん)。

 書き上げてふっと息をつけば、まわりから「んにゃあ」「んなごろう」という怪し気な鳴き声が。見ると、私が陣取っているベンチを取り囲むように4匹のネコがうろうろしています。ミケやら、淡い黄土色のトラやら、それより濃いめの黄土色のトラやら、黒地に茶色いブチのあるのやら。たまに立ち止まって、尾を立てたり、ふくらましたりしながら、「んにゃごろう」「んごろう」「んにゃああああああ」「なあああああ」と鳴きます。
 図らずもその中心に位置している私は、「な、なにかイケニエの儀式が進行中ですか!?」な無気味さに襲われました。なんなんだよ、そのミョ〜な鳴き声は!
 しかし、なんですな。かまってやろうと近づくともれなく逃げるくせに、人が一心不乱に何かをやってるときにかぎって、気を引くような真似をするんですね。ほんとよくよくヒネくれた生き物ですよ、ネコって奴ぁ。

 ンゴロンゴロいってる連中を無視して、走り出したのは17時のサイレンが聞こえるころ。税務署まで全力疾走。門に飛び込みました。受付のプレハブ小屋の前に立っているおじさんに、「まだ受け付けていただけますか?」とおねだりの上目遣い。しかしですね、身長172cmが、その肩位置に頭がくる小柄なおじさんに対して上目遣いすると、あらぬ方を虚ろな目つきで見上げている怪しい女にしか見えないのですが、そのへんどうですか。
 上目遣いの効力か、怪しさの効力か、あるいはまだ中に申告の人がいたからか、小屋に通され、受け付けていただきました。17時10分! ふうううう。

 もう閉められた門を、通れるほど開けてもらって、宵闇迫る外界へ出ました。ああ、今年も一大イベントが終わったよ。疲れたよ。

 「来年はもうちょっと要領よく申告しよう」って毎年決意するんですけどね。その決意は保って1日。いや、もうすでに今年1月からの領収書、引き出しに放り込んだままですよ。何に使ったか書いて、項目ごとにノートに貼っておかないと。ふ、ふううう。

04.3.12 Fri.  つやつや物語1 個人的リサイクル法    3.17 5:17
 画集の出版に参画いただきたくお願いしていたアニメーターの方から、スタジオ-出版社経由で連絡がありました。「構成案を考えましたので、一度打ち合せを」。
 以前の打ち合せで台割案(ページネーション案)をお渡ししていたうえでのお話に、「はっ、もしかしたら台割、全部変更!?」とか思って、一気に落ち込んでしまいました(気が早いな)。もう夜も眠れないくらいに。ほら、やはり今出版する必然性とか、ここがこの本のポイントという売り部分が、企画には必ず存在するのですよ。出版社が出版企画を通すいちばんの理由は、「この企画なら、こういう読者層が見込めるから、これくらいの部数が売れそうだ」という予測が立つことです。その企画意図の部分が崩れてしまうと、屋台骨が倒れる=企画自体が倒れるという事態を引き起こします。

 以前は締切りが重なって寝不足、今回は不安性不眠症で寝不足という、ちょっと他人様にはお見せしたくないヘロヘロ状態で打ち合せに臨みました。手なんか震えちゃったりして。
 詳細をお聞きした瞬間に、すべての不安が吹き飛びました! 提示されたアイデアは、こちらの意図を十分に汲み取っていただいたうえに、それ以上の価値が加わったものでした。
 構成は、私が「この画集では、これをメインにしたい」と思っていた作品について、イラスト点数ひいてはページ数をボリュームアップ。そのほかに企画意図に合った作品をいくつか提案いただき、3部構成が5部構成に内容充実。そのうえ、先にお願いしていた表紙や口絵の描き下しに加えて、デジタルではなく手描きの描き下ろし3点と未発表のイラスト1点掲載追加! マジですか!?

 もう感激して、踊りそうになりました。杞憂、早とちり、疑心暗鬼……ほどほどにな、自分。な〜んて自省する前から、ああ、燃える〜! 萌える〜!!
 打ち合せが終わってからこっち、顔がにやけて止まりませんわ。う〜ふ〜ふ〜ふ〜。単純と笑わば笑え! うれしいものはうれしいのよ!!


 気分がMAX上機嫌に突入すると、あらぬことを口走るクセは健在です。本日は「『GB』のタレ銀次について」でした。……なんでや。そういえば、かつて友人や知り合いのプロデューサー相手に、BL(Boy's Love)語りで一人盛り上がったことがあったっけな。……その節はすみませんでした。
 あ〜、でも。結果的にボツになった企画のためにやったBL研究が、現在進行中で仕事に活かされてるんだから、ほんと人生に無駄はないってことですね。昨年末に冬コミに行ったことも、ものすごくプラスに働いていますしね。人生、無駄なし。リサイクルのモデルケースですな。

04.3.9 Tue.  あざなえる                3.17 4:23
 18時から、ある出版社にて打ち合せ。2月にちらりと入ってきていた、新書判書籍刊行に関して。いや、私が書くわけではないですよ。編集請け負いのね、打ち合せです。
 きっぱり言ってしまえば、書籍編集は門外漢なんですが。お話を聞いていて、クライアントの意向と、こちらの提出する企画がうまく合いさえすれば、ユニークなノベルズシリーズができるかなと思いました。

 すでにあらゆる出版社から、シリーズ名をもつブランド商品として刊行されている女性向けジュブナイルやBL小説。書店の本棚を見渡せば、いささか発行過剰の観があります。角川ルビー文庫・ビーンズ文庫、集英社コバルト文庫、講談社X文庫ホワイトハート・ティーンズハート、小学館キャンパス文庫・パレット文庫、徳間書店キャラ文庫、新書館ウィングス文庫、白泉社花丸文庫、オークラ出版アクア文庫、二見書房シャレート文庫など、ぱっと思いつくだけでもこのとおり。じゃあ、それぞれのブランドでどこが違うのかといえば、答えられる人は少ないのじゃないかと思います。「エッチ度が違う」くらいではないですかね。

 そんななかで、新しく(もないんですが)ブランドを立ち上げるのは大変だなあと思いつつ。でも「このジャンルの物語は、このブランドを探せば大丈夫」みたいな独自性を確立し、ついでに、ありがちなストーリーではなく、物語の構成や知識で読ませるというものはどうでしょう。もちろん、手にとってもらう取っ掛かりは、表紙や挿し絵の力が重要。でも続刊を期待してもらうためには、ストーリーやキャラクターの力も必要でしょう。リピーターを創出することがブランド成功のカギでしょうから。


 そんなわけで。作家さん候補として、現実世界ともうまく触れ合うリアルな独自世界の構築と物語の構成力をお持ちの方、博覧強記で年頃の少女が憧れる落ち着きと余裕のある文章を書かれる方、完成されていない若者の悩みや思いを読み手の心情に迫るように描かれる方、音律をもつような心地よく美しい文体と幾何学的な構成力をお持ちの方、テンポのよい文章ではっと気づくと叙述トリックにかかっている魔術のような文体をお持ちの方、この5名の方を考えています。

 イラストレーターさん候補としては、今回は何よりも画面の構成力を重視。作家さんが選んだ世界を上下左右どこからでも表現できるマルチな視野と、風俗を適確に描ける画力を持ち、キャラクターの距離感や関係のニュアンスを描ける方(言い換えれば、文章を誤解なく読み取り、そのうえで萌え要素を描いていただけるような方ですね。ぽっ)を8名さまほど考えています。
 ……メカや建物などが描ける方も候補に上げておかないと。ああ、線引きの高いことよ(苦笑)。

 事務所内での打ち合せが済み次第、上記の方々さま、口説かせていただきます! 色よいお返事をいただけましたら、幸いです。ただ、私からの依頼だからとか、義務感とかではなしに、「やりたいから」「できると思うから」という、ご自分の意志で参加するかどうかを決めていただきたいと、これは心からのお願いです。
 この件に関しましては、「書いていただく」という気持ちでおりますが、「書かせる」気はまったくございませんので。

04.3.7 Sun.  ゆらぎ                  3.9 2:55
 昨年11月から本年2月までが仕事の第1タームなら、今日からは第2タームということで、いよいよ次の本の編集に取りかかります。そのあたりを打ち合わせするため、事務所に行きました。

 いろいろと水面下で進んでいます。停滞しているものもあります。1月はかなり「仕事の岐路」に立っている気がしたのですが、いただく仕事をこなしているうちに、なし崩しに次の本の編集作業に突入しております。まあ、案ずるより生むがやすしということでしょうか。

 いつだって、不安はすぐ隣りにあります。いつ仕事がなくなるか。仕事があっても、いつ自分が書けなくなるか。病気で倒れたら、なんの保障もないまま、収入がなくなります。ええ、老後だって心配ですとも。あるいは、自分がやっていること、書いているものに、自信をなくすことだってあります。私が関わるから、よけいに作業の手間がかかってるんじゃないか、と不安になることもあります。
 「いつも自信満々ですね」と言われる私ですが(笑)、人並みの不安は持ち合わせています。

 でも不安がっていてもしかたがない。今、目の前にあることを順番に片づけていくしかないのです。少なくとも、「あのときにやっておけばよかった」という後悔だけはしたくない、そんなふうに思っています。英国人に「You're a determined woman!」と言わしめたからには、常にその方向で(笑)。
 そんなことを思う、今日この頃です。

04.3.6 Sat.  かぴばらー!!               3.8 5:13
 カピバラとは何ぞや? 一言で言うなら「世界最大のネズミ」でございます。動物園で見るたびに触ってみたいと思っていたんですよぅ。ついに、ついにその日が!

 本日は横浜へ出かけました。カピバラをなでるため、ではなく、横浜みなとみらいホールにクラシックコンサートを聴きに、です。
 横浜はみなとみらい線ができて、とっても便利になりましたね。東急東横線渋谷駅の自動券売機の「企画券」のボタンを押せば、「みなとみらいチケット」というのが買えるのですが。渋谷-横浜間の往復乗車券と、横浜-元町・中華街(山下公園)間のみなとみらい線一日乗り放題が込みで840円でした。みなとみらい駅、新高島駅、日本大通り駅、元町・中華街駅、横浜駅で乗降したので、かなりお得だったんじゃないでしょうか。駅ごとに切符をいちいち券売機で買う必要がなく、「みなとみらいチケット」1枚で改札をスルーできるので、そういう意味でも便利でした。
 横浜在住の知り合いは「桜木町駅が無くなって寂しい」なんて言ってましたが。一介の観光客である私は、みなとみらいや中華街、山下公園に行くのに、地下鉄に乗ったり、バスに乗ったり、相当歩いたりしなくてすむだけで大感激! やっと横浜の観光スポットの位置関係も飲み込めましたしね(笑)。みなとみらい線、万歳!でございます。

 本日のメインイベントは、プラハ・フィルハーモニー管弦楽団の公演。13時に開演、休憩を挟んで15時過ぎまで。包容力のありそうな、でも町中で会っても指揮者とは気づかないであろう親近感が魅力のイルジー・ビエロフラーヴェク率いるプラハ・フィルは、技巧よりもハーモニー重視の、ふわふわと沸き立つような音のグルーヴが特徴の楽団です。その、蜂蜜の滑らかさと時を経た琥珀の艶やかさをイメージできる、やわらかで耳に心地よい音色は、たしかにモーツアルトよりもチャイコフスキーに合う、東欧の音です。
 1曲目はグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ序曲」。とても心地よく聞けました。
 2曲目はチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」。客演ソリストとして、日本の若い女性ヴァイオリニストが登場したのですが……。以下、かなり毒舌になります。見たくない方はカーソルを置かないでください。
 ★これが最低でした。彼女のヴァイオリンの技巧は確かにエクセレントです。否定しません。しかし、プロの演奏者としての自覚に未熟さを感じました。
 まずは選ぶヴァイオリンがなってないんですね。プラハ・フィルの音はやわらかい甘めの音です。だったら、ソリストもやわらかめの音を出すヴァイオリンを選ぶべきだろうに、彼女が選んだのは固く尖った音を出すものでした。さざ波のようにきれいに円環を描きながら客席に押し寄せるグルーヴに、まるで刃物の鋭さで切り込むようなソロパート。音の響きの質がまったく合っていないのです。
 次に、このお嬢さんたら、まったくオーケストラの音を聴いていません。たいへんに自分勝手な演奏を聴かせてくれました。「協奏曲」のツボのひとつは、ソリストのヴァイオリンが旋律を走り、バックにオーケストラが流れる、しかしその両者の主客が入れ替わるときにバシッと音がはまる、その快感だと思うのです。ところが、まったりとハーモニーの波を作りながら曲の素地を整えているオケの音に、ソリストの尖った音がひたすら切り込んでくるので、まったく両者が交わらないのです。
 ついでに、ソロパートの演奏の切れ間で、たいていのソリストはそのままオケの音に耳を傾け、オケの演奏者にも聴衆にも敬意を払って壇上に立っているものですが。彼女ったら、自分のパートが切れると、天井を向いたり、下を向いて溜息をついたり、しんどそうに足を踏みかえたり、ちっともじっとしていません。オケの音を聴いてる様子も見えません。「そんなにしんどいんだったら、帰れ!」と怒鳴ってしまいそうだったので、眼をつぶって、彼女の姿が視界に入らないようにしていました。
 弾いてるときも、弾いていないときも、指揮者とのアイコンタクトもなし。いや、こんな聞き苦しく見苦しい協奏曲を聴いたのは初めてです。NHK「のど自慢」で、自分の声に酔いしれている人が、ときどき演奏を置き去りにして好きなように歌っていることがありますが。それを聞いているときとよく似た、いたたまれなさを感じました。いたたまれなさが苦しくて、「一刻も早くコレを終わらせてくれ」と願ってしまいました。

 一言でいうなら「大人と子ども」。技巧の妙技に頼るのではなく、ハーモニーこそが音楽の真髄と見切ったオケのグルーヴは大人の渋さ。自分の技巧にとらわれて、まったく演奏者としての余裕のない、子どもなソリスト。いったい誰が、今日のこの日にプラハ・フィルと彼女を組み合わせたのか、と思います。このソリストも、アシュケナージやベルリン・フィル、ニューヨーク・フィルとの演奏なら、こんなに浮かなかったでしょうに。

 むか〜しに、天才ヴァイオリニストがオケに合わせられず葛藤する、という物語を考えたことがあります。でも「そういうシチュエーションってあるのか?」と、ずっとナゾに思っていました。さほどクラシックコンサートに足を運びませんし、その機会の中ではソリストとオケが乖離している状態を聴いたことはありませんでした。
 このコンサートを聴いて、「ああ、こういうことがあるんだ!」と思った次第。これはあれですか、あの話を書けという天の啓示、オラクルですか?(笑) いつ何時、長年のナゾが解けるものやら。機会というものは、人智の遠く及ばぬところにあるものです。

 ところが、この「ヴァイオリン協奏曲」が終わったとたん、場内、割れんばかりの拍手です。呆れました。きっと私の耳が悪いんでしょうね。音楽が本来もつ心地よさを味わえなかった私は、もちろん、拍手のひとつも贈りませんでした。


 第2部はドヴォルザークの「スラヴ舞曲第8番」と「第10番」で始まりました。私の好きな曲です。次もドヴォルザークの「チェロ協奏曲」。今度は若手チェリスト、イルジー・バールタとの共演です。元よりチェロ自体がそう先走る楽器ではないうえ、この方はソロパートの切れ間ではオケの音を聴き、グルーヴに乗り、指揮者とアイコンタクトを交わし、非常に「演奏家」でした。いい気持ちにさせていただいて、もちろん、惜しみない拍手を贈りました。
 まったく、音楽は侮れないものです。


 ホールから出たら、海風の吹きすさぶ広場に「富士サファリパーク」の移動動物園が来ていました。「動物園」といっても、アメリカンリトルホース1頭とヒツジ2頭、ロップイヤーウサギなどのウサギがいっぱい、モルモットがいっぱいという程度。子どもたちがウサギやモルモットを抱いたり、落としたり(苦笑)しています。アメリカンリトルホースやヒツジも触れるうえ、触ったあとの消毒用にアルコール液まで置いてあって、至れり尽せりです。
 そこに、なんとカピちゃんが! 私、ネズミは好みませんが、カピバラは大好きなのです。え? 藤崎竜の『封神演義』に出てきたからだろうって!? ……まあ、否定はしませんけどね。神戸の王子動物園にもカピバラがいましてね。なんか触りたかったんですよ。でも動物園では触れなかったのです。
 それが、目の前にいるんですよ! 触り放題なんですよ!! 触らいでか!!! 手触りはちょうどカサカサした乾し草のよう。毛の1本1本が固くて、モルモットやウサギのようなふわっとした温かみは感じられませんでした。むしろイノシシに似た、ゴワゴワした感じ。触られても動かず、ときおり耳をピピッと動かしながら、のっそりしている姿は愛嬌がありました。ムー○ンみたい(笑)。思わず和みのひとときでした。
 カピバラを見たいという方は、 こちらこちらへ。



 そのあと横浜開港資料館へ行き、企画展「ドン・ブラウン文庫1万点の世界」を閲覧しました。ドナルド(ドン)・ブラウンは、昭和5年に来日。外国人向けの経済紙『ジャパン・アドヴァタイザー』の記者として約10年勤め、帰国。戦時中は、米国政府の情報機関、戦時情報局(OEI)に所属。日本軍に投降を呼びかけるアジビラの作成に携わりました。戦後はGHQとして再来日。新聞・雑誌、放送、映画・演劇などのメディア全般の占領政策に関わりました。
 彼の蔵書の中には、森有礼の直筆文が記されたものや、『百人一首』の英訳書(まさか、あるとは思っていませんでした)、あと外国人が日本語を学ぶときに使用した教材(これがけっこう稚拙でおもしろかったです)や、日本について書かれた文献が数多くありました。
 また、アジビラも各種展示されていました。いかにもな日本の朝食の写真に「飯を食いたいか!」と書かれたビラ、切々と日本の不利を訴えるビラなどなど。話には聞いていましたが、実物を見るのは初めてで、思わず眺め入ってしまいました。


 横浜とくれば、中華街で中華料理ですね。コンサートのチケット代のかわりに夕食をおごれと強制されたので、おごりました(苦笑)。私としては、チケット代はチケット代でお払いし、夕食は割り勘というのがありがたいのですけどね。「ふかひれ姿煮コース」一人3500円也はおいしゅうございました。
 その席で、外国のお酒を渡してくるので受け取ったら、「それ、旅行中に列車で相席になった人にもらったんだけど。僕は酒が飲めないので、雑文堂さん、それを飲んで、感想と空き瓶を送り返してください」ですってさ。私の知り合いって、なんつーかさぁ……。ああ、つまるところ私がそういう性分なのかな。類、友ですか……(苦笑)。

04.3.3 Wed.  キャラクターの死            3.8 4:20
 今日は「雛まつり」。ですが、実家は4月3日にまつるので、私もそれに準じます(笑)。
 スーパーに行ったら、「さくらご飯」を売ってました。モチ米を桜の葉で炊いて、桜の葉と塩味のアーモンド・スライスをまぶし、桜の花の塩漬けを添えたものです。「雛まつり限定」とのことで、「華やかだからいいじゃん」と買ってみました。
 味わいは、アンコが入ってない桜餅のような感じでした。おいしかったです。


 『封殺鬼シリーズ 27 終の神話・地号の章』霜島ケイ(小学館/キャンバス文庫)を購入しました。予告では最終巻とのことだったのですが、予定どおり(笑)この巻では終わらなかったもようです。
 そこで、ついにあるキャラクターが終わりを迎えます。元々、雷電と酒呑童子の2人の「鬼」を懐柔するために「泣いた赤鬼」計画を遂行した彼ですが、結局、自分自身が「泣いた赤鬼」だったことを自覚するはめになります。それを意識したときから、彼にはその道しかなかったのだろうなと思える、そういう終わり方でした。それでも、巻を重ねて、その喜怒哀楽につき合ってきたキャラクターが終わるというのは、寂しいものがあります。

 昨年12月に、ひとりのキャラクターの死にショックを受けたばっかりだったのですが! そうです、『TRIGUN MAXIMUM』内藤泰弘(少年画報社/ヤングキングコミックス)のウルフウッドです。彼がコインの持ち主と知ったときから、このキャラクターは長生きしないだろうなあと感じていたのですが、案外がんばってくれるので、もしかしたら最後までヴァッシュにつき合ってくれるのかなとも思っていたのです。
 でも、やはり12枚のコインはヴァッシュの手に渡るしかなかったのだなあと。このときは、本当に落ち込みました。
 最近では、「ミステリーボニータ」連載中の『瞳に映るは銀の月〜妖精計画〜』北原文野(秋田書店)でテツの死を知り、なんだかショックを受けている自分に、「え!? 私、実はテツのこと好きだったの!?」とうろたえてしまうという一幕もありましたが。

 二次元のキャラクターも、文章や絵で描かれていくうちに、いつの間にか命をもって生きるものなのだなあとしみじみ思いました。当然、お話の中で倒れていくキャラクターもいるでしょう。そこに至るまでに、そのキャラクターがどのように描かれてきたかで、こんなにも感動が生まれるんですね。
 「泣いた赤鬼」やウルフウッドは幸せなキャラクターです。その人生や人となりが丹念に描かれ、それだけ作者の方にも愛されて、そしておそらく読者が納得できる終わり方をしたと思います。特にウルフウッドは、彼らしく、すべてに片をつけていきましたよね。
 ああ、でも架空の人物とはいえ、これからの文章に、画面に、二度とそのキャラが出ることはないのだと思うと、やはり辛いですね。

04.3.2 Tue.  Deadhead                3.3 6:14
 時間があるときくらいは、きちんと「日記」を書こうと思っていたのですが! 目が覚めたら、朝が来ていました。おや? そんなわけで、結局「遡り日記」です。ダメダメ。

 1日は日中から墜落睡眠をかまし、24:30に目が覚めた私。おかげさまで『GU○GRAVE』も『クロノク○セイド』もオンタイムで観ました。結局、そのまま二度寝することなく事務所へ行ったんですね。
 ……当然といえば当然ですが、ものすごい睡魔に襲われました! もはや何の役にもたちません。生ける屍です。ほんとはね、頼まれごとがあって、それ用の資料のリスティングをするつもりだったのですが。リスティング作業っていうのは、そうでなくても眠気が誘われるといいますか、美しいExcel表の隙間に魂が吸い取られるといいますか。
 そのうえ「眠ってはいけない」という自己防衛本能が働くのか、「だから、『ドラッグ オン ○ラグーン』がこうくるから」「あれ、『俺屍』ってどこにおいたらいいんだ」「あ、『スター○ーシャン』ってもう出てるよな〜」「『ラグ○ロク・オンライン』はどうよ」……などと、延々口から勝手に言の葉がもれていたようで。「なんか言ってる?」と声をかけられ、ハッと我に返る始末。
 「なんでもありませ〜ん」(てへ)。

 早々に作業を放棄しました(おいこら)。「朝日新聞」掲載の『イノセンス』の記事を読み、『から○りサーカス』(最近ハマったらしいスタッフと、あるるかんの話とか! しろがねの話とか! 鳴海(加藤って言うからわからないんだ。鳴海と言ってー!)の話とか!)の話をしに、事務所に行ったようなものでしたね。<何、やってんだー!!

 帰宅して『ファイ○ーボーイズ め組の○吾』を観ながら夕食を食べている途中で、まぶたが落ちてしまったらしく。ハッと気がつけば、大吾が号泣してました。すごいな、このシリアスなストーリーの最中に寝られる自分に愕然だ。

 目覚ましはとりあえず2時にかけてたんですよ。2:12からの『PEACE ○AKER 鐵』を観るつもりだったので(なんでうちのビデオは10chがタイマー録画できないのか、と小一時間……)。ああ、その前に『攻殻○動隊』も見逃してるやん!
 起きたら、6:00でした。「あ、た〜らしいあーさがきた き、ぼ〜のあさーだ♪」。うんうん、清々しいねえ。

 そんなわけで、3月2日は「何もしなかった日」だったのです。はい。

<お知らせ>
 遡りついでに、2月13日の「日記」追加しました。

04.3.1 Mon.  目覚めを知らず              3.2 3:23
 起きたら、3月2日になってました。ふふ、遠い目〜。

 朝に、本日締切りの原稿を書き上げました。でも頭が停止寸前だったので、1時間ほど仮眠をとって、もう一度チェック。9時にはメールで送って、終了!
 お風呂を沸かしている間に朝食。前夜から保温にしていたあったかごはんと、黒豆の煮豆と、しらすのポン酢かけと、きゅうりとナスの浅漬け。うまうま。
 お風呂に入って(仕事明けの朝風呂はサイコ〜!)、それから銀行と書店に行きました。なんだかえらい寒いなと思ったら、みぞれが降ってました。歩いているうちにボタ雪になってきたり。え〜と、5日ほど前は20度もあったと思うのですが、なんですか、この極端な寒暖の差は。どうりで身体がだるいはずです。この寒暖の落差についていけてないのよ。

 銀行でお金を下ろすなり(土・日通じて財布には230円しか入ってなかったのね)、書店3軒をはしごして、「ぱふ4月号 2003年まんがベストテン」、「週刊少年マガジン13」、「月刊ザ・テレビジョン」、「文藝春秋3月号 芥川賞発表 受賞二作全文掲載」、『プラネテス』4巻(幸村誠/講談社 モーニングコミックス)、『プラネテス プラネテス公式ガイドブック』(講談社)(←なぜタイトルが重複してるんだろ? 「プラネテス 公式ガイドブック」ではいかんかったのか?と背表紙を見てちょっと悩む)、『いつか夢の果てより』(りぎあ・もーりす/学研 ピチコミックス)を購入。
 ……まだ1冊も読んでません。

 町を歩いているうちにクラクラしてきたので、帰宅。そのままベッドに飛び込んで……起きたら、日付けが変わってました。あら?


 さて、日本時間3月1日、現地時間2月29日、ロサンゼルス・コダックシアターにて第76回アカデミー賞の発表・授賞式が行なわれました。
 助演男優賞にノミネートされた『ラスト サムライ』の渡辺謙、外国語映画賞ノミネートの山田洋次監督『たそがれ清兵衛』(主演:真田広之)は、いずれも受賞ならず。渡辺氏は日本人としては岩松信以来37年ぶり、『たそがれ清兵衛』は日本映画としては22年ぶりのノミネートとなりました。

 助演男優賞は下馬評どおり『ミスティック・リバー』のティム・ロビンスが、外国語映画賞はカナダの『みなさん、さようなら』が受賞。
 長編アニメ賞は『ファインディング・ニモ』が選ばれて、ようやくアメリカ・アニメの御本家受賞となりましたが。でも、あれって御本家作品というより、PIXERアニメっていったほうが……モゴモゴ。

 なんといっても今回のアカデミー賞は『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』の独壇場でした。最優秀作品賞、監督賞をはじめ、ノミネートされた11部門全てを制覇! ちなみに、その11部門は作品賞、監督賞、美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ賞、視覚効果賞、音響賞、音響編集賞、作曲賞、編集賞、脚色賞です。
 あのトールキンの原作を、熱狂的なファンもうなずく映像と脚本に仕上げたというだけで「すごい」と思いますから、この受賞も当然でしょうか。それに、やっぱりゴールデングローブ賞にしても、アカデミー賞にしても、欧米の賞なのですわ。

 でも、日本人、日本作品のノミネートで、例年以上に盛り上がったのも事実。それも『ラスト サムライ』、『たそがれ清兵衛』という、日本人が見て「よっしゃ!」と共感できる映画だったことが嬉しかったです。


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