Dairy for Paranoid

JUNE 2004

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04.6.27 Sun.  つやつや物語10 『艶』来る        9.2 4:20
 発売日より2日も早く、Amazonから予約していた『艶』が届きました。なぜだ!? この2日、いや1日でもあれば、もうちょっと楽でき……モゴモゴモゴ。

 雑誌と違って、書籍は印刷所のスケジュールのスパンが長いのです。雑誌(雑誌コードを持っているもの)は、発売日が決定しているので、印刷機が確保しやすいからとか、取次のラインにも発行計画がわかっているので乗せやすいとか、まあ、イロイロ雑誌がムリできる理由があるみたいですが(でも、これらの理由が正しいのかどうかはわかりません。風のウワサです)。ずっと雑誌畑にいて進行管理をしていた私には、書籍に関する印刷会社からの進行スケジュール表は信じられないようなゆったりっぷり。
 しかし、提示されたスケジュールを守るということも大切なことだと、この度は教えていただきました。常に印刷会社の営業さんと「サバつぶしバトル」を繰りひろげている私には、「書籍は違う」ということは、特に肝に命じておかなくては忘れそうです(苦笑)。

 「つやつや物語」もこれにて終了。もし追いかけてくださった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございました。

 『艶-TSUYA- 中嶋敦子STYLE』、6月29日発売です。どんな反応がいただけますか、楽しみなような、怖いような。発売直前のこのドキドキ感がたまらないんですよねv

04.6.23 Wed.  アドバイス?               7.7 15:16
 知り合いが次々に独立し、フリーランスで仕事を始めています。メールで「会社辞めます」「独立しました」とお知らせくださる方も多くて、年賀や季節のお見舞いも欠礼しがちな私には恐縮至極なのですが。
 それがビジネスコンサルタントとか、資格を生かしてソーシャルワーカーとかなら、「独立おめでとう!」と喜べるのですが(……いや、それでもフリーランスの厳しさが身に滲みているので、心底から素直には喜べないんですけどね。有給休暇・ボーナス・保険ありの会社勤めのほうが収入や精神の安定性は上じゃよ、ほんと)。
 フリーライターと来た日にゃあ、「ワシにどう言えと?」の心境です(笑)。ま、さすが心得たもので、勤めていた会社からの仕事の発注を足場にして、徐々にフィールドを広げていくという方がほとんどなんですけどね。現実的でよろし。

 で、わりと聞かれるのが、「フリーライターとしてやっていくについて、アドバイスを」ってことなんですが。私に聞くなよう〜。今だにフリーライターを続けていることを、私自身がいちばん不思議に思ってるんだ。ついでに「成功するコツ」なんてものがあるなら、私が知りたいやい!

 でもまあ。あえて言うなら、どんどん経験と知識を積み上げていくことですね。来た仕事はどんどん受けること。でも苦手な分野の仕事は無理をして受けないこと。無知や苦手意識が文面や納期に反映されてしまって、かえって信用を落すことになりかねません。そして、引き受けた仕事については、手を抜かないで「調べる」ことかなあ。

 あと、とても大切なのは「人を尊敬できること」。特にインタビューの仕事では、かなり大きなポイントなのではないかと思います。
 取材相手に会ったとき、腰をかがめて卑屈になって、神仏のごとく奉れってことではないですよ。インタビューのテーマは、その方の業績や仕事、携わった作品についてがほとんどです。ならば、相手の仕事やその作品をきちんと把握して、「プロ」であることを認識して、尊敬しろってことです。仕事や作品に対して、社会から対価を得るというのは本当にたいへんなことです。それが趣味の延長であれ、生業であれ。
 特にフリーランスで仕事をしている人間は、自分のした仕事で対価を得るシビアさを心得ているはず。だからこそ、サラリーマン編集やライターより、相手の方のプロフェッショナル性について、十分認識しておくべきです。その認識こそが、フリーならではの特性として、重宝されることになるかもしれません。

 そもそも、相手の方に対する尊敬の気持ちがなければ、話なんか聞きだせません。誰が、取材すべき仕事や作品を理解していない、そのうえ大上段に「聞いてやるから、話してみろ」といった態度をとる人に、自分のことを話したいと思うでしょうか。逆に、「私、何もわかりませんから、好きにお話ください」と言われて、タレントや話すのが仕事の人以外で、自分のことを滔々と話せる人がいるでしょうか。
 自分に置き換えてみて、どういう尋ね方をされたら、自分の仕事や思うことについて話してみたくなるか考えてみてください。「うん、うん」と相づちを打ってくれて、先走った見解や知ったかぶりな知識を披瀝されることなく、でも言葉が見つからないときに、「あのときのお仕事はこうでしたね」「あの絵はどう描かれたのでしょう」といった話の端緒をもらえれば、口が滑らかになりませんか?
 インタビューといっても、つまるところ人間どうしの会話です。
 な〜んて偉そうに宣っておりますが、未だに「失敗したな」と思うこと、しばしば。ただ、私に来る仕事の70%がインタビュー取材ってことは、まあ、自分が心がけているところはさほど間違ってはいないんじゃないかと思っていますけどね。

04.6.15 Tue.  つやつや物語ブレイク 病名決定(笑)   9.2 3:52
 一向に腹痛が引かないわ、咳は止まらないわ、熱は38度あたりから下がらないわで、別のクリニックに行ってみることにしました。事務所のスタッフに紹介されて、最初にこちらのクリニックで診てもらおうと思ったのですが、午前の診療時間が終わっていて、玄関が閉っていたんですね。それで、もうひとつ紹介された医院に行ったら、診療時間は終わっていたけれど受付が開いていたので、無理を言って診てもらったのでした。

 クリニックでようやく病名をいただけました(笑)。気管支炎とアレルギー性鼻炎。あと、強い薬でちょっと胃壁がやられちゃった胃炎。前の医院で処方された薬を見せたら、「どれもいい薬だよ。僕もあなたのような症状の方によく出す薬ばかりだ」と言われて、安心しました。この我慢ならない腹痛は、ひどい薬物アレルギーじゃないのかとちょっと疑ったもので。やはり複数の医院に診てもらうというのは、安心を呼びます。
 もう次の『WOLF'S RAIN 川元利浩画集』の作業に入っているのですが。ちょっと生活状態を整えて、休息を取ろうと思います。

04.6.14 Mon.  つやつや物語9 校了           9.2 3:14
 初出がわからず、イラストが発見できない例は挙げましたが、逆にイラストがあるのに初出がわからないというものもありました。『超機動伝説ダイナギガ』のイラストのうち2点が、そのパターンだったのです。すでにリリース元が解散していて、確認する当てもなく。「初出不明」と表記するのも締まらない話ですが、だからといっていい加減なことを書くことはできません。ちなみにこのCDイラストの二次使用に関する契約書だけは某会社にあったんですよね。それがなければ、権利者不明で掲載できないところでした。

 閑話休題。「最後まで確認できないままになってしまったなあ。困ったなあ」と思いながら、デザイナーさんの事務所へ色校を持っていきました。「ちょっと待っていただけたら、この場でチェックしてしまいますよ」とデザイナーさんに言われて、腰を落ち着けると、「実は僕、こういうのをサンプルでもらってたんですよ」と手渡されたのが、『ダイナギガ』のCDの現物3点。「かなりレアなんじゃないですか」と言いながら、パッケージを開け、ライナーノーツをパラパラと捲って、思わず目が点になりました。あれほど、どこに使用されたものかわからなかったイラストが、ライナーノーツのセンター見開きに使われているではありませんか! 慌てて他のCDもチェックしましたら、「ああっ!」。初出不明だった2枚目のイラストも発見です!!
 ジャケットイラストはネットで絵柄をチェックすることができたのですが、さすがにライナーノーツの内側やジャケット裏までネットにはUPされてなかったのです。

 こんなギリギリのタイミングで判明するなんて、まるで何かの神がついているかのよう! まったく意図なく『ダイナギガ』のCDを見せてくださったデザイナーさんとその偶然に感謝しつつ。これで、最後まで悩みのタネだった「初出問題」、パーフェクトに解決です!


 ここに至るまでには、つくづくしみじみいろいろありました。
 エンディングフィルムの合成など、「なぜ一介の編集プロダクションがそんなことまで!?」と思うような事態になったり。額装されたセル画をお預かりしたら、いざ入稿の段になって、額縁がはずれず大慌てしたり。校了直前に、企業から「このイラストは使わないで」と申し入れがあって、慌てて差し換えたり。
 ……後から見直したら、誤字が1カ所あったり(ずも〜ん)。

 でも、中嶋さんの表紙絵や口絵の完成データをいただく度に狂喜乱舞したり、『奪還屋』『逮捕』の章扉ににんまりしたり、中嶋さん直筆の原画やラフを堪能させていただいたり。間違いなく、中嶋さんのイラストの力に励まされて、ここまでやって来ました。
 「この作家さんのイラストはいい!」と自信をもって、その方の画集を作ることができますのは、何より編集冥利につきる幸せです。

 中嶋さんはじめ、版元編集さん、スタジオディーンの関係者各位、講談社関係者各位、綾峰欄人氏、各編集部・企業関係者各位、デザイナーさん、ねこまた工房のスタッフ各位にはたいへんお世話になりました。ありがとうございました。

04.6.12 Sat.  つやつや物語ブレイク 今度は腹痛     9.2 2:56
 なんのせいだかわかりませんが、座っていられないくらいにお腹が痛くて、そのうえ、解熱剤を飲んでいないと熱が下がりません。薬が切れたついでに再び医院へ。どうやら、腹痛の原因は解熱剤がきつすぎたもよう。よく効く薬は、反動も大きいということでしょうか。咳が相変わらずひどくて、腹筋に力が入るたびにお腹も痛い。八方塞がりの気分とは、こういうものでしょうか。

 本日は、印刷所からの色校戻し。でも、腹痛で脂汗だらだら状態だったので、ひと晩おいて翌朝からの作業にしてもらいました。集中できないので、チェックがチェックにならないんですよね。我ながら、このスケジュールで極道なことをしているなあと思いつつ。

04.6.9 Wed.  つやつや物語ブレイク 発熱        9.2 2:28
 ここ2週間ほど、インタビューやコメントをまとめて原稿を書くかたわら、素材を探し、あちらこちらに連絡をとる、という状態でした。必然的に、日中、素材探しや諸連絡を片づけ、夜に原稿を書くということになります。

 2、3日前から咳がひどくて具合が悪いなあとは思っていましたが、事務所の席に座っていると、悪寒が走るようになりました。今、寝付くわけにいかないので、即、医者へGO! 午前中の診察が終わるタイミングで、無理矢理お願いして診てもらいました。
 案の定、38度台で発熱中。「早急に解熱してほしい」とうるさい私に、先生は飲み薬の解熱剤と風邪関係の薬、漢方っぽい薬、うがい薬を処方してくださいました。

 本日は印刷所入稿の段階で、何が何でもチェックをやり終えなくてはなりません。
 スタジオ及び中嶋さんのチェック用には、デザインデータをPDF書類にして送ります。また、各企業、各編集部に、最終的に「何に使われたイラストを何点掲載させていただきます」という連絡と了承も取っておかなくてはなりません。そのあたり、事務所のスタッフと版元編集さんがやってくださったので、かなり負担が軽減しました。

 午後には悪寒も治まったので、ひと安心。次の日の午後には入稿も終わったような気が。いや、すでに記憶がまったくないんですが(苦笑)。

04.6.8 Tue.  つやつや物語8 原作版のふたりv     9.2 1:52
 所長から講談社「少年マガジン」編集部に依頼してもらった、綾峰欄人氏の、中嶋さんへの「お祝いメッセージ」の原稿が来ましたv 原作版の『奪還屋』さんコンビですよ!!(<当たり前だ!)
 事務所にバイク便が到着するなり、封筒を開けて、じーっと見入ってしまいました。おそらくこのときの私の状態は、食べ物を前にしてキラキラ輝く目をしたタレ銀状態! キラキラオーラが出ていたに違いありません! お花トーンでも可!!
 『艶』の作業を始める前は、まさか綾峰さんの蛮ちゃんと銀次の原画を手にするなんて思ってもみませんでした。本当に丹念に細部まで描きこまれた繊細なイラストでしたv
 ……先生、なんだかトーンがかわいすぎます!と思ったのはナイショのヒミツです。ついでに、先生、ちゃんと読める字、お書きになれるではないですか、とか。いやいやいや。
 ちょっと穴とか開いてましたら、それは私が見つめすぎたせいです。
 せっかくの「お祝いメッセージ」ですから、掲載後は中嶋さんにお渡しすることで、「少年マガジン」編集部経由で綾峰さんにご了解いただきました。

 藤島康介氏にもメッセージをお願いしていたのですが、大変にお忙しい時期と重なってしまったそうで、いただけなかったのがちょっと残念です。

04.6.7 Mon.  『TROY』のトロイな話2         7.15 6:58
 「トロイ戦争」の神話の中には、「どこかで聞いたような話」がけっこうあります。それを、「国変われど、人間が作る話は同じ」と解釈すべきか、あるいは「トロイ戦争」の話からインスパイアされたものなのか、いろいろ想像してみるのもおもしろいのではないかと思います。

 パリスを出産するとき、母ヘカベは「トロイア全市を焼く100の腕をもつ怪物を産む」夢を見ました。パリスの父、トロイア王プリアモスは、生まれたばかりの息子を羊飼いに預け、イデ山中に捨てさせました。しかし、5日後に様子を見に来た羊飼いは、牝熊の乳で生きのびたパリスを哀れに思い、自分の子として育てました。
 子どもを出産する際に子どもの未来を暗示する夢を見たり、お告げを聞いたりというのは、シッタールダの母・マヤやイエスの母・マリアにも共通します。また、西欧で多いのが、赤ん坊のときに死ぬ目に遭ったけど、生き延びて神なり英雄なりになったという話。ギリシアの神々では「2度生まれた」ディオニソスが生まれたときからけっこうひどい目に遭ってますし、英雄ではオイディプスなどがいます。山中に捨てられたけど生き延びたエピソードは、例えば『白雪姫』を彷佛させるのですがいかがでしょう。

 ヘラ、アテナ、アフロディテが喧嘩するはめになった「不和のリンゴ」は、争いの女神エリスがペレウスのテティスの結婚式に自分だけが招かれなかったことを怒って贈ったもの。この話は『眠れる森の美女』などの「招かれざる客の呪い」のモチーフになっています。

 アキレウスは母テティスのおかげで不死身を誇りましたが、テティスがつかんでいたかかとだけは、不死身の水に触れることなく弱点となりました。
 『ニーベルンゲンの歌』に登場するジークフリート(ジーフリト)は、倒したドラゴンの血を浴びて不死身の身体になりましたが、背中に貼り付いた菩提樹の葉のため、そこだけ血に塗れず、弱点となりました。

 アガメムノンのによる処遇に腹を立てて戦列を離れたアキレウス。同じく戦争から身を引いたパトロクロスだったが、英雄アキレウスを失って士気が上がらず、劣勢に陥ったギリシア軍を見かねて、アキレウスの武具をまとって戦場に出る。ギリシ軍はアキレウスの帰還に士気が上がるが、武具を見てアキレウスだと思った敵軍に集中攻撃され、傷だらけになったパトロクロスはついにヘクトルに止めをさされる。親友の訃報を知ったアキレウスはトロイア人に復讐するまでパトロクロスを埋葬すまいと誓い、戦列に戻る。
 という話は、私に菊池寛の『形』や、「自分」を隠して戦場に赴くところは『蘭陵王』にも通じるかなあと思わせます。


 以前にも書きましたが、「神話以後から現代までに書かれた物語のテーマは、すべてこの『ギリシア・ローマ神話』に集約される」とも言われます。トロイ戦争に興味をもたれた方はホメロスの『イリアス』をどうぞ。

04.6.6 Sun.  『TROY』のトロイな話1         7.15 6:08
 これを書いている現在(7/15)、公開残り10日という『TROY』。来週水曜日のレディースデイを狙っています。
 「掲示板」で「アキレウスとオディッセウスは兄弟なのか?」というご質問をいただいたので、答えを書きました。一応これもサルベージしておきます。
 「掲示板」でお答えするついでに、「『ギリシア神話』などに馴染みのない日本では、内容的に『なんじゃ、これ』と思われるかもなあとは思っているのですけど」と書いたら、「いやいや。『ギリシア神話』は日本ではよく知られた神話だと思いますよ」というご意見をいただきました。で、自分の書く文章の舌足らずっぷりをどっぷり再認識してしまいました(苦笑)。

 たしかに『ギリシア神話』は、日本では知られた神話だと思います。かなり『ローマ神話』とごっちゃになっているとはいえ、「星の神話」や「星占い」あるいは「天文」への興味を通じてよく知られています。「『インド神話』や『北欧神話』より知られている」「『日本神話』より知られているかも」というご意見ももっともで、比較論でいえば、「日本でもっとも知られている神話は『ギリシア・ローマ神話』だ」といわれても、否定しません。


 ただ、ごめんなさい、私が言いたかったのはそういうことではなかったのです。ということで、以下、舌足らず分の補足言い訳なのですが(笑)。
 映画『TROY』をご覧になった方は、それらが何を指すかもうおわかりかと思うのですが。西欧の絵画や小説には「不和のリンゴ」「パリスの審判」「トロイのヘレネ」「トロイの木馬」という成句が、何の説明もなしに登場します。すべてトロイ戦争からきた言葉で、特に「トロイの木馬」は、最近では「トロイの木馬型」というパソコンのウイルスの系統名にも使われています。「ファイル」に偽装して、開いてみたら中身はウイルスというタイプがそう呼ばれます。
 例えば、ほとんどの日本人は、「三種の神器」「天の岩戸」「黄泉の千引石」「因幡の白兎」などが文章や絵画に出てきても説明不要でわかると思います(今の若い人は知らないという事実はおいといて)。先に挙げたトロイ戦争関連の語句は、西欧人には、日本人にとっての「三種の神器」のごとく知識の基本です。けれど、映画『TROY』を見る前の日本人が当たり前に知っているとは思えないのですが、いかがでしょう。

 例えば、地図帳のことを英語で「アトラス」Atlasと言いますが、なぜそう呼ばれるかご存じの方は何人くらいいらっしゃるでしょう? これも大本をたどれば『ギリシア神話』から来ています。「ヘラクレス」の名前はご存じでしょう。では「ヘラクレスの12の苦難」は? ギュスターヴ・モローの絵画にもある「スフィンクスの謎かけ」とは? 「サイレーンの誘惑」「ディオニソスの勝利」も絵画によくあるモチーフですが、何に由来しているかご存じですか? もし何も見ずに瞬時におわかりなるなら、西欧人並みのかなりの『ギリシア神話』通であると賞賛させていただきたく存じます。
 でも、おそらく普通の日本人は知らないことだと思うのです。

 国の文化に根ざしていない。それが、私が言いたかった「『ギリシア神話』は、日本に馴染んでいない」ということです。それこそ、外国人が「三種の神器」に首を傾げるがごとく、日本人で「パリスの審判」の語句を見て、「ああ、そういうことね」(戦いの勝利(アテナ)よりも、全世界の覇権(ヘラ)よりも、美しい女性(アフロディテ)ひいては愛をとる人間の根源的な欲求)とわかる人は少ないだろうと。そして、そこを理解していないと、女性にこだわって戦争の原因を作ってしまうパリスは「なんてダメな奴なんだ〜」ってことになっちゃうんですね。私も『ギリシア神話』のトロイ戦争のくだりを読んだときに、「パリス、お前ってヤツはよう」という感想でした(笑)。でも、神話的にいえば、「それが人間」という、ひとつの真理であるわけです。

 長らく「神話」とされてきたトロイ戦争は、1871年からのハインリッヒ・シュリーマン(1822〜1890)による度重なる発掘調査により、史実だったことが証明されました。史実であったなら、パリスがヘレネを奪ったことが戦争ぼっ発の火種になったとしても、他にもいろいろな要因があったと思います。地上での「本当の戦い」と、ギリシアに味方するヘラとアテナと応援者たちと、トロイに味方するアフロディテと応援者たちの「神々の戦い」がミクスチャーされた神話として記録が残されているため、そこから実際に何があったのかを探り出すのは難しいとは思います。でも、おいおいいろいろな事実がつまびらかになるのではないかと期待しています。


 さて、以下は「掲示板」からのサルベージです。
 アキレウスは、件のエリスが呼ばれなかった結婚式の新郎新婦である、テッサリアのプティアの王ペレウスとネレウスの娘である海の女神テティスとの間に生まれた一人息子です。テティスはアキレウスをかわいがり、彼を不死身にしようとして、冥界の川に彼の身体を浸しましたが、かかとをもって浸したために、そこだけ水に濡れませんでした。
 後のトロイ戦争で、パリスはアキレウスのかかとを射抜いて倒しました。以来、人間の急所のひとつは「アキレス腱」と呼ばれるようになりました。

 「憎しみの犠牲」という名をもつオデッセウスは、ホメロスの『オデッセイア』の主人公であるイタケ王。ラエルテスと有名な盗賊アウトリュコスの娘アンティクレイアとの間に生まれた息子です。アンティクレイアはラエルテスと結婚する前に、シシュポスとの間にオデッセウスを妊娠していたという説もあります。
 (シシュポスは狡猾で知られ、「死」であるタナトスやハデスを手玉にとりましたた。その不敬の罪で、地獄で、山上に大岩を運び上げては落とされ、またそれを運び上げるという罰を与えられました。カミュの『シシュポスの神話』のバックボーンになっています)。
 盗賊で詐欺師の祖父をもち、それ以上に狡猾で知られたシシュポスが父親?などの血筋のせいか、オデッセウスはその知恵で「トロイ戦争」で活躍します。死の予言をおそれ、スキュロス島のリュコメデス王の王宮に女装して隠れていたアキレウスを見つけたのもオデッセウスです。

 ってことで、神話上はアキレウスとオデッセウスは兄弟ではありません。

04.6.4 Fri.  つやつや物語7 セル画が使えない理由   9.2 0:54
 『艶』をご覧になって、例えば中嶋さんの初期の代表作である『らんま1/2』のイラストが描き下し1枚しかないとか、『逮捕しちゃうぞ』のあのイラストが載ってないとか、『ハーメルンのバイオリン弾き』のイラストがないとか、思われた方も多いかと思います。
 『艶』に掲載するイラストの選択基準は、まず当初の企画書のとおり『奪還屋』と『逮捕しちゃうぞ』が中心であること。中嶋さんが掲載を希望されているイラストであること。そして、セル画の場合、ポジが残っていること、です。


 今ではアニメーションのほとんどのイラストがデジタルデータで作られていますが、ほんの5年ほど前はセル画が主流でした。このセル画、ふつうの絵画と違って、セルの裏から着彩することはご存じでしょうか。
 ふつうのイラストは、人体の肌や服など広範囲なところから着彩していき、鼻の影や、光のハイライト、瞳のハイライトなどは最後に描き込みます。ところがセル画は、瞳のハイライト、瞳、白目、鼻や唇の影やハイライト、唇の赤、頬の影、髪の影、顔全体の肌色というふうに、ふつうの絵画とは逆の順序で着彩していきます。後から描き直しができませんので、「色指定紙」という、原画のコピーに「瞳ハイライトはこの部分とこの部分にホワイト」「瞳はアニメカラーの何番」「肌の一番影はここからここまでで何番」「肌の二番影はここからここまでで何番」という指示が書き込まれたものが用意され、着彩さんは「色指定紙」のとおりに色を塗っていきます。

 ところが、セルに引かれる主線は、セルの表から書かれています。原画は紙に書かれますので、その原画から主線をセルに手でトレスする場合と、セル用のゼロックスでコピーする場合があります。ただ、どちらもセルの表に主線が描かれます。これが着彩と同じくセルの裏に描かれていれば、何重にも重ねられたアニメカラーで保護されるのですが。表に露出しているうえに、この主線に使われるインク(特にゼロックスコピーの場合)、年月を経るほどに粘度をもつのです。セルの上に保護用にトレーシングペーパーとか紙とか他のセルとかかけておきますと、それにぺったりくっつきます(苦笑)。無理矢理はがすと、ペリペリと身の毛のよだつ音を立てて、主線のインクが保護紙のほうに写ってしまいます。写ってしまった分、セル画の主線はかすれたり、途切れたり、細くなったりして、均一の太さをもった線ではなくなってしまうんですね。

 保存状態にもよりますが、だいたい3年もすれば、セル画はそんな有り様です。また、アニメカラーも色が褪せてきます。私の感覚では、レモンイエローなどの黄色系の褪色が激しかったように思います。

 それを防ぐために、商品関係の企業や出版社、編集部の中にはセル画をあらかじめポジで撮影しておくところもあります。また、印刷会社から色分解用に撮影されて戻ってきたフィルムを取っておいたりします。
 でもまあ、何度も使う商品関係の素材ならいざ知らず、雑誌に1回掲載するだけのセル画をいちいちポジ撮影する編集部は少ないです。必然的に、いざ何かで二次使用しようとすると、印刷に耐えない状態になっているんですね。
 今回の『艶』にも何点かセル画がありますが、スタジオで汚れを取って、レタッチしてもらっています。『らんま1/2』のセル画などは劣化してしまっているとのことで、「それでも『らんま1/2』は載せたい」と中嶋さんが描き下ろしてくださいました。
 『ハーメルン』も、素材が集まった時点で、セルの汚れ落としとレタッチが必要でした。画集の構成の問題とスケジュールの問題から、『艶』では掲載見送りとなりました。ほんと、セル画ってデリケートな絵素材なんですよ。


 本日、「メガミマガジン」編集部から「あるべきところになかったイラストが、ようやく見つかりました」のお電話! 一時はどうなることかと思いましたので、粘り強く探してくださいました副編集長さんに感謝感激です!!
 商品関係の素材も、版元編集さんのご尽力で集まりました。ただ、残念ながら初出がわからずじまいのものが1点(もしかしたら下敷きとかノートとかの文房具用だったかもという話まで出たのですが、わからずじまい)、なぜかどこにもイラストデータが残っていないものが4点。それら以外はすべて揃いました。

04.6.3 Thu.  とりあえず                7.7 14:52
 某出版社へ5人の書き手さんに提出していただいた9本のプロットを持ち込みに行きました。さまざまな形でいただいたデータを、Iさんと私が誤字・脱字、言い回しなどを校正し、事務所の所長が3日がかりで書類化したものです。ノベルズの企画の話をいただいてから、約2カ月。「長いようで、短かかった」などと、卒業式の卒業生答辞のような心持ちです。
 今から申せば、書き手さんからいただいたプロットのチェック、修正のお願いと、『GUNGRAVE -the backyard-』の取材原稿や『艶-TSUYA- 中嶋敦子STYLE』の編集の作業が同時進行だったので、なにかと至らない点があったかと存じます。申し訳ございません。書き手の皆さまにはご了承いただけましたら、幸いです(ぺこり)。

 担当の方にひとつひとつのプロットについて簡単に説明し、描き手さんたちのご紹介もしたあと、「それではひととおり読ませていただきます」との返事を得て、退出しました。
 「編集部内の企画会議にかけなければなりませんし、広告部との話もありますので、お返事はしばらくお待たせしますが了承ください」とのこと。

 元より「歴史」が専門の部署なので、プロットについての考証が気になるだろうし。出版社に企画を持ち込めば2、3か月待ちあたりまえ。半年以上待たされた経験もあるので、そこは「よしなに」ということで。
 でも、せめて1か月、長くても2か月くらいで「やる、やらない」のジャッジがほしいところです。

04.6.2 Wed.  唖然愕然呆然               7.7 15:26
 ある有名企業の傘下にある広告エディトリアル会社に出向きました。そこが毎週発行する「メールマガジン」の第1特集200字、第2特集200字ほどのライティングの仕事を紹介いただき、お話をうかがいましょうということで出かけたのですが。
 「これまでどんな仕事をしてきましたか?」と言われて、まあ、仕事の履歴を披瀝したわけです。特に当該メルマガに関わるような仕事については強調して、あとは当然のことながら「インタビュー仕事が多い」という説明になりました。ライターにとって、資料起こしの仕事よりインタビュー仕事のほうが多いということは、それだけクライアントから信用いただいていて、スキルもそれなりにあるという、「ライターとしては中堅なんですよ」という証明になるのです。

 そのとき、打ち合わせの時間に遅れて女性が現れ、席につきました。もちろん、その方は私の職歴説明を途中から聞くことになったわけです。いよいよ、メルマガの仕事の話に移って、「どういう文体で」「購読者層はどういう人」という話になったときに、おもむろにその女性は言いました。
 「インタビューの仕事ばかりされていたようですけど。この度のメルマガの仕事について、こちらから情報を聞ける人とか用意している手間も時間も取れませんよ。そのへん、大丈夫なんですか?」
 「はあ?」
 「だれかに聞かないと書けないんじゃ困るということです。そんな人、用意できませんし、いちいち私たちに電話とかされても忙しくて答えられないし」

 ……どこの世界に、商品紹介のメルマガ記事200字×2の仕事で、人に取材するライターがいるんだ? そんなもの、送ると言われている資料といくつかのサイトを検索すれば、半日でできる仕事です。ライター初級の資料起こし。メルマガ1本で手取り○千円ほどの仕事に、取材して電話代や時間をかけるほど、こちらは優雅な暮らしをしておりません(苦笑)。
 仮にも有名企業の広告や関連雑誌の企画部門にいながら、このライターに対する認識のヘンテコぶりはなんなんだ!?

 どんなに大手だろうが、有名企業の傘下だろうが、仕事内容の認識に齟齬があるところとはうまくいくわけがないので、心中でこの仕事はキャンセルしました。案の定、先方からも適当な断わりが来ましたし。お互い、ご縁がなかったことが幸せでしょう(笑)。

 別にココだけでなく、ライターや編集の仕事というのは正しく認識されていません。業界内でさえ、「予算ないから、編集なしで本が作れないかな」とか(ありえねえ)。「編集って原稿集めるのが仕事でしょ」とか(仕事の一部ではありますな)。ライターとして受けた仕事でも、「インタビューの内容次第で記事も変わると思うから、記事を書くのと同時にページのサムネールも起こして」とか(それは編集の仕事。そもそもテーマのない取材をしてどうする)。
 ときどき仲間内で「編集は特殊技能として国家資格にすべき」とか、「ライターの技能レベルは検定とかで認証すべき」なんて話が出ます。編集には編集業務の知識とリサーチ能力、企画力、構成力、交渉術、スケジュール管理力が必須だし、ライターには国語能力、語彙数、文章力、表現力に放送禁止用語などの知識も必要です。
 「まったくね〜」なんて溜息で話が終わるこのごろです。


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