見返り美猫、ジプシー「こなつ」
My Life With CATS!
納屋猫とチェシャ猫
パリジャン・キャット |
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パリ出張中の住まいは自分で確保すること……これが結構なストレスでした。最初の2週間はウィークリーホテルが用意されていたものの、仕事をしながらの住まい探しは不可能と思えました。 実は事務所さえ、他の会社の事務所の机1つと電話1台を借りるという状態。こちらも窮屈なことこの上なしです。 しかし「捨てる神あれば、拾う神あり」とはよく言ったもの。そこの事務所の女所長さんが、「友人が1ヵ月ほど留守にするんだけど、その間、ネコの面倒をみてくれる人を探している」と教えてくれました。 場所はパリ16区、パッシー近くのアパルトマン。といえば、憧れの高級住宅街です。家賃も格安で、願ってもない話でした。 |
地下鉄駅から徒歩5分。部屋は4階で、螺旋階段で上がっていきます。古くて広くて落ち着いた、パリを紹介するオシャレな雑誌から出てきたような部屋です。そこで、何度聞いても名前の発音がはっきりしない(「ミヌー」か「ミノー」かビミョー)ネコとの同居が始まりました。 私は飼い物をしたことがありません。帰宅時間が不規則な仕事についたうえに、旅行好きときているので、飼い物は「しちゃあならねぇ」ことでした。 飼い主からの取り扱い説明では、1. 大変に気難しい 2. 気に入らないことがあると、あちこちにシッコしまくる 3. 窓から飛び下りかねないので、首のヒモははずさないこと……そうですか。なんだかネコのトリセツと思えませんね。 そうして1匹と1人の仁義なき戦いが始まったのです。 彼(彼女?)は台所の奥の窓際にいます。 朝の挨拶は、顔を合わせた瞬間の「フガーッ!」。なかなかに友好的です。飼い主が姿を見せないので、かなりストレスがたまっておられます。あちこちに毛のかたまりが散っています。むやみにバッバッバッと後足で身体をかきむしるからです。 場所は“台所”です。空気に細かい毛やホコリが舞ってるあたり、ちょっとアレな感じです。 エサを皿に盛って、水を換えます。ムシムシと食べておられる間に、自分の朝食を作ります。スープにブリオッシュ、卵と焼きソーセージの簡単な朝食です。とにかく台所にいる時間は短く、それが平和に暮らすコツです。まるきし姑と嫁の関係です。こっそり手早く、食べてる間に作業を終える。 それでも油断はできません。 独特のニオイが立ちこめます。「ああううう」がっくし。 私が台所を我がもの顔に使っているのがお気に召しません。本日もやって下さいました。 朝食後、出勤前の仕事ができました。ペーパータオルと雑巾で床掃除です。ほぼ毎日の「突発的事故」は遅刻を呼び、スタッフには随分なご迷惑。しかし、放っておくとハエがたかりそうなうえ、帰る頃にはこのニオイが部屋中に充満しているかと思うと…。 まだ液体だけならいいです。最初は飼い主のいない緊張からか、アメーバのような茶色いものも。後には、ヤルときには固体まじりになりましたけどね。 いやはや、ネコのシモにここまで悩まされるとは思いませんでした。 度を越すと叱りますが、そうすると、調味料が入っているワゴンに「引っ掛ける」というワザをかましてくださいました。床は平面ですが、ワゴンは中の物をすべて取り出して拭くor洗わねばなりません。見事な倍返しに、メマイがしました。 2週間ほど過ぎますと、私の存在にも慣れたらしく、少なくとも「フガーッ!」はなくなりました。寝床の毛を掃除し、身体にブラシをあててやると気持ちよさそうに目を細めます。 私が台所を使っている間は、不本意そうに窓の外に張り出している桟の上に乗る、くらいの妥協もしてくれるようになりました。 それでも、絶対にネコトイレではしませんでした。必ず床です。 そんな彼(彼女?)が、飼い主が帰ってくる3日くらい前から、床にしなくなったのは今でも不思議です。わかるんでしょうか。 人生を楽しむような洒脱な雰囲気は結局、“ふり”だけで、自分のテリトリーに入られると毛を逆立てる、パリジャンそっくりなパリジャン・キャット。 とにかく継母と義姉たちに掃除・洗濯を強制されるシンデレラな気分をバッチリ味わった1ヵ月の同居でした。 帰ってきた飼い主に首の紐をはずしてもらい、脱兎のごとく家中の点検に走るネコさま。とりあえず不審点はなかったのか、今度は飼い主の膝で甘えます。 かわいいじゃないか、ちぇっ。 飼い主には「信じられないくらい、きれいだ。前に旅行した時は、身体中、毛ダマだらけだったんだ」と褒めていただきましたが。キレイにしてないと、ニオイだけでもやってけないですよと、心の中でつぶやきました。 一生、飼い物はすまいと決意したのはいうまでもありません。 |
チェシャ・キャット |
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オールド・レディ「こゆき」 |
さて、波乱怒濤のごとしのパリ滞在を終えて、英国に帰ることになりました。しかし英国での住まいは未定。しばらくはB&Bにでも泊まって、下宿先を探すつもりでした。 ところが帰る1週間ほど前に、3ヵ月前にお世話になったパリジャン・ネコの飼い主さんに路上でばったり。もう英国へ引き上げる話になり、住まいの話になり……。 「ボクのネコ仲間がロンドン郊外のウィンブルドンにいるから、連絡してあげるよ。彼はツアーガイドで、しょっちゅう家を空けるから、ネコの世話できる人を下宿させてるんだ。君はネコの世話うまいから、ちょうどいいね」 いいんですか? ネコの世話うまいんですか? スンゴイ誤解を感じているのは私だけ? いや、それより、ヨーロッパネコ愛好家同盟みたいなのがあるンすか? そうか……ネコ好きはドーヴァー海峡を越えるのか〜。 帰る3日前に「連絡してみて」といわれ、そのお宅に電話をしました。 「もう、下宿人はいるんだけど。でも1部屋空いてるし、ネコ好きならいいよ。いらっしゃい」 「ありがとうございます」 とんでもネコな誤解があるような気がするんですが……ま、いいか。 うやむやのうちに「ネコ好き」のネコを被った下宿人完成。ウィンブルドンでの生活が始まりました。 1家屋を1階と2階で間仕切りし、1階はイギリス人男性の家、2階が日本人N氏の家です。リビング&キッチンに3部屋。1部屋はN氏、1部屋は下宿人のK嬢、1部屋が私でした。あ、忘れてはいけません。4匹のおネコさまもいらっしゃいます。 N氏宅の貴婦人「こゆき」。黒に腹と手足が白。いかにも高級そうな毛足の長いコートをお召しです。随分のお年で口臭もなかなか。その舌で毛皮のお手入れをなさると、匂いがすごくてちょっと側にいらしていただきたくないです。しかし、優雅な足取りで、人間に身体をなでさせるのは当然とばかりに、気紛れにスリよっていらっしゃいます。 「こてつ」は「こゆき」のご主人。貴婦人な奥様とは反対に、スレンダーなボディが魅力のボヘミアンです。ご近所でも評判の冒険家でした。あまり彼の記憶が残ってないのは、私が再びパリへ行っている間に車にひかれて亡くなったからです。 「こなつ」はご夫婦の娘。私のお気に入りのジプシー娘です。出て行ったらなかなか帰ってこず、どうしたんだろうとあちこち探していたら、いつの間にか台所でエサを食べてるような神出鬼没さが魅力?です。 「やんちゃ」はN氏のお気に入り。「こなつ」の息子ではありませんが、「こゆき」「こてつ」夫婦の孫です。いかにも次男的性格で、いつも人の顔色を伺うような上目づかいが好き嫌いの論争を呼ぶポイントです。 |
やんちゃだから「やんちゃ」 |
私が最初に入った部屋は、ネコの通り道でした。夜中以外は、廊下側のドアと窓を開けておくのが任務です。朝6時にはカリカリカリカリとドアを引っ掻く音がします。起きて開けると4匹がドアにたかっています。「こゆき」以外の3匹が部屋を横切り、窓の前のデスクに飛び乗り、私をじーっと見つめてきます。窓を彼らの顔の分くらい開けると、ダダッと音をたてて、文字どおり飛び出して行きます。 二度寝していると、今度はふ〜んと匂いが。それでも放っておくと、顔の!鼻の!前に「こゆき」さまのしっとりと唾液にしめった背中が……。「こゆき」さま、私の手の上にお尻を置かないで下さい! 7時頃には、N氏がエサの準備を始めます。するといつの間にか戻ってきた3匹+1匹がそろって、台所へ。 やれやれと会社へ行く支度をするのですが、日曜などはそのまま寝ています。 その日も惰眠を貪っていますと、パリポキポキとポッキーを折り食べるような音が……。気にもとめずに寝て、しばらくして起き出しました。ベッドから足を下ろすと、その裸足の足先に何か細かいモノが散らばっています。睡霧でかすむ目をこらしたとたん。 「げっ!」 そこには胴体はきれいに食べられて、翼の部分や羽、足などがパラパラ散らばったスズメの死体が。 ふっ、けだものめ。食べるのはかまわんから、人の寝てるそばでヤるのはやめれ。あと、きちんと掃除はしておくように! N氏宅のネコさま方は躾が行き届いていて、粗そうすることもなく、おかげでストレスなく付き合えました。 K嬢が帰国した後は、N氏が出かけている間はエサやり、トイレ掃除を引き受けました。エサは日替わりでいろんな味のネコ缶を開けるだけ。時にはゴージャス版もあって、ヘタすると人間の食事より美味しいんじゃ、と思うことも。トイレもその部分の砂が固まるので、その固まりをすくってポイするだけ。ラクラク簡単でした。 秋のちょっとハダ寒い日には、ネコがベッドにいつの間にか上がっていて、思いがけずぬくぬくしたり。 ブラッシングでとろけてる連中をおもしろがったり。 そのうえ、N氏は大変お料理上手で、いろいろお相伴に預かりました。 そんな感じでエセネコ好きも幸せに下宿期間を終え、「さぁ荷造りしよう」とベッドの下からスーツケースを引っ張り出しました。えぇ、初日に荷物を出したっきり、3カ月ほど触っていませんでした。 まるで油を流したかのようなテリ、べたついた感触、臭い……。 ずっと感じていたネコ臭さはこれかぁ〜!!! 大型スーツケースの面積は結構あります。またしても雑巾で拭きまくる自分の姿は、ありしパリの日のデ・ジャ・ヴュ。 イギリスのチェシャ猫どもの「してやったり」なニヤニヤ笑いが、今も思い出すと空に浮かびます。 |
納屋猫 |
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ゴッド・マザーと娘たち |
今、私が住まっている部屋は2階で、真下に納屋の屋根が見えます。春から初夏、そして今くらいの時期から晩秋まで、ネコの昼寝場所もしくはコミュニケーション・プレイスとなります。 これを打っている最中も、ゴッド・マザーがお昼寝中です。このマザーから3世代がご町内を徘徊しています。今年の春、4世代目が生まれたのですが、母親(マザーの孫)がちょっと間抜けなヤツだったせいか、いつの間にかいなくなってました。この母親がどれほど間抜けかというと、隣家の庭の鶏小屋の屋根に上がっては、小屋に鶏と同居しているジュウシマツを狙うくらい。金網の目が細かいので、どうしてもムリなのに、ほぼ毎夕、屋根に上がってはネコパンチを繰り出しています。いい加減に学習しろよ。 さて、ネコの世界もなかなか複雑なようで、納屋の屋根に上がれるのは、ゴッド・マザーと娘たちに限られています。夫はもちろん息子もダメ。たまに息子が戻ると、周囲5mをリングにマザーとの戦いが繰り広げられます。 ゴッド・マザーから生まれた2世代目は特にカラフルで、典型的な日本の三毛ネコから、漆黒のネコ、イギリスのドメスティック・ネコ風、果てはどうみてもアメリカン・ショートヘアな子どもも。でも、どのコも美猫に成長したのには呆れましたけど。マザー、実は大変な面くい……。 |
でれ〜ん |
まぁ、お昼寝いいですよ。人が原稿を打ってる真下で、スカスカ寝息響かせて寝られようと気にしませんよ、ええ。 でもね、その3倍に伸びるのは勘弁してほしいわけですよ。でろ〜んとね。 肉球ぴくぴくさせて誘うのもちょっと……って感じです。 寝心地のいい姿勢をさがして、あっち向いたりこっち向いたり丸まってみたり。耳をぴぴっと動かしてみたり。 背骨ないんかい!という丸まるの寝相には感心します。 何より、思わず踏みたくなるのは、腹丸出しでそっくり返って寝ている時でしょうか。緊張のかけらもなく、また実際、私も含めて納屋の屋根のネコに手が届く人間もいないため、緊張の必要もなしで、油断しきってます。 こんなだらけた生き物は、もはやネコではありません。 とか何とか、今日も目の端に映るネコどもの寝姿に「寝たいんだよ、私も! ハラ出してな!」とか毒づきながら、キーボードを打つのでした。 この納屋に集うネコの一族がどうなっていくのか。 すでに2世代目の5匹は姿を消しました。新たな家族をつくったのか、悲劇的な結末を迎えたのか、それはわかりません。 3世代目の男のコはこの間、ケンカか事故かでしっぽを1/3無くして血まみれでした。また、片目を何かでぶつけて(ぶつけられて?)目蓋が開かなくなったコは、7月以来見ません。 ちょっと間抜けなあのコは、今日も鶏小屋の屋根の上です。 いつも変わらず、ほどよい時期になるとやってくるのは、ゴッド・マザーだけです。 クシュクシュ咳なんかしてるので、ちょっと心配ですが。 そろそろ秋の求愛シーズン。またファミリーが増えるのでしょうか? |
のび〜ん
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