紅茶の愉しみ

 Brooke BondとTwiningsのオリジナルブレンドはミルクティーに、Liptonオリジナルブレンドはレモンティーに。フレバーティーはFauchonのアップルティー、Fortnum & Masonのカモマイルティー。
 これが、私のフェイバリット。
 日本茶、中国茶、紅茶。私はとにかく葉っぱものが好きだ。アロマ(香り)とテイスト(味)が楽しめて、植物なところが好みにあう。
 だから英国と相性がいいのかもしれない。

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 私の紅茶の愉しみ、それは思い出に直結している。
 オックスフォードの下宿先のランドレディ(奥さん)とランドロード(旦那さん)は、私より2歳上。学校で知り合って、18歳でもう一緒に住んでいた(というのは、英国では当たり前。正式に結婚する前にしばらく同棲する人が多い。お試し期間?)、実は結婚歴の長いご夫婦である。
この二人、英国人にあるまじく、紅茶が嫌い。食事時もお茶時も飲むのはコーラである。二人の子ども、ダニエルとジェイドはジュースを飲むので、この家では日本人の私だけが紅茶を飲んでいた。

 オックスフォードでもロンドンの下宿でもそうだったが、基本的に紅茶はマグに入れる。
 ティーバッグをマグに入れ、冷蔵庫からミルクを出して適量加え、それから湯を注ぐ。ティースプーンでもって、ぐいぐいと押し絞るようにティーバッグをつつきまくる。スプーンでティーバッグをすくって、ゴミ箱へぽい。
 これで完成。一般家庭の「ティー」はざっとこんなものである。

 それでも微妙に好みが出るのが、お茶の葉。スーパーのお得用50袋とか100袋入りを買うのだが、同じ葉の種類でもスーパーによって味が違うのだ。
TESCOのBreakfast teaが好みという人もいれば、St.MichaelのBreakfast teaがいいという人もいる。ちなみに私の好みはSaintsbury's(セインズベリー)のEarl Greyで、これはロンドンの会社の先輩社員に教えてもらった。パリ出張中だった私にわざわざ届けてくださった、この紅茶の味は忘れられない。

 さて、それでは1日のうちにどれほど紅茶を飲むか。
私の場合は、まず朝食に1杯。学校に、あるいは会社に着いて1杯。
昼食に1杯。午後はパブでビールを1杯。
帰ってからディナーで1杯。食後に1杯。
夜、TVを見るとき、勉強するときに1杯。
だいたい6杯。
 マグの紅茶、ソーサーの上にマクヴィティのビスケット。これで夜のTV番組鑑賞態勢はOK。
 そうそう、紅茶にビスケットを浸しながら食べると、かけらをボロボロ落とさずにすむ。じゅうたんを気にするお宅にお邪魔して、テーブルが近くにない場合、このテはけっこう有効である。

 ロンドンの下宿では、ファミリーとディナーをとるときはシェリーとワインをつけてくれた。食事が終わると、ダイニングからリビングに移動して、そこで紅茶を皆でいただく。談笑しながら飲む、このときの紅茶は最高においしかった。

 Would you like a cup of tea?

 この問いかけが好きだ。ひとつは私が紅茶好きだから。もうひとつは「あなたのことを気にしているよ」と知らせてくれるやさしい言葉だから。

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 英国といえば、アフタヌーン・ティー。
 まずは一般家庭のティータイム。
 オックスフォードの下宿の午後、子どもを学校に迎えに行くまで奥さまはけっこう暇。
たまに一緒に子どもを迎えにいきましょうのノリで、隣人がやってきて「お茶」になったりする。
バタークッキーにマクヴィティ・ダイジェスティヴ・ビスケット、キットカット、ポテトチップスなどありあわせのお菓子に、バンズにハムや野菜をはさんだ「ハンバーガーとサンドウィッチを足して2で割ったようなもの」。それにマグになみなみと入った紅茶が、部屋にいた私に「あなたにも」と運ばれてくる。

 日曜日は特別な日で、ランドロードが料理をする。ディナーは昼。たいていはローストチキンに同じオーブンで焼いたじゃがいもとにんじん、ゆでたカリフラワーが1枚の皿に載って出てくる。ミンスの入ったグラヴィーソース、クランベリーソースはお好みで。
 お昼がディナーなら、夜は?
 17時ごろ、お菓子とサンドウィッチか、ハンバーガーが盛られた皿と紅茶が運ばれてくる。これがハイ・ティー。家族全員が同じものを食べ、やがて子どもたちを奥さんの実家に預けて、夫婦二人で映画などを楽しむために、出かけていく。
 私は出かけることもあれば、留守番をすることもある。

 家庭でのアフタヌーン・ティーでいちばん好きな組み合わせは、ミンスパイと紅茶。クリスマス前になると、ミンスパイの登場が待ち遠しかった。

ガーデン
天気のいい日はガーデンでアフタヌーン・ティーを。


 ケントの下宿では、ちょっとお茶でもというとき、たまにパブに連れていってくれた。
 パブによっては、昼はランチ、午後は喫茶店、夕方からパブというところもある。自家製のケーキを何種類か用意している店もあったが、たいていは自家製スコーンと紅茶だ。
 スコーンはプレーンとレーズンの2種。日本でよく見るスコーンより一回り大きめなので、ショートケーキ1つくらいのボリュームはある。これにバター、マーマレード、ジャムをつけ、Clotted Cleam(クロテッド・クリーム)やアイスクリームをのせて食べる。
 紅茶は2杯どころか3杯は入れられそうなポット。ティーバッグも3つくらい入っている。どんどん濃くなっていくので、最初は薄めに入れて、少し残した状態で足していくと、きぶくならない。
あまりに濃くなってしまったら、「Hot water, please.」といえば、ポットに足してくれるか、別のポットに入れてもってきてくれる(はず)。

 オックスフォードでスコーン&クロテッドクリームを楽しむならThe Mître(マイタ)。戸口から入って左手がパブ、右手がレストラン、2階がティールーム。ただし、ティールームは14時ごろから。たまに閉まっていることもあるので要注意。
窓辺の席に座れば、歴史ある建物を眺めたり、通りを行く人を上から見下ろしながらアフタヌーン・ティーが楽しめる。

 自家製ケーキにスープなどを気軽に味わいたいなと思ったら、ラドクリフカメラの近くのSt.Mary The Virgin教会の裏から入るティールームへ。大学生がボランティアかバイトでやっているらしいティールームは、教会の地下という珍しさもあって、知る人ぞ知る穴場だ。ケーキ、パンからサラダや軽食まで、メニューは日によっていろいろ、売り切れご免だ。
冬の寒い日には、学校の昼休みの1時間をフルに利用して往復。熱いスープとパンと紅茶に随分助けられた。

 オックスフォードで正式なアフタヌーン・ティーをご所望なら、Hotel Randolph(ホテル・ランドルフ)のラウンジ。15時くらいに行けばちょうどいいが、ランチは抜いておいた方がベター。1度目に行ったときは3段トレイで、2度目は普通の皿で供されたが、今はどうだろう。
3段トレイの場合、上段はティーサンドウィッチ、真ん中はスコーン、下段はエクレアやケーキが載っていた。ティーサンドは1口大に切られたフィンガー・サンド。具はキュウリ(キュウカンバ・サンドはアフタヌーン・ティーの定番)、卵、スモークビーフ、トマトなど。白いパンと茶色のパンが使われて、市松模様に置かれていた。ヘンなところに凝るよなあ。ケーキはティー・ケーキと呼ばれ、タルト、ムース、フルーツケーキ、トライフルなどいろいろから2種類くらいが載ってくる。
もちろんポットにいっぱいの紅茶に新鮮なミルクは必須。
 ゆったりくつろいでいただこう。

 ロンドンのフォートナム・メイソンのティーラウンジのアフタヌーン・ティーも、3段トレイで同じようなメニューがサーブされる。

 これまでで、いちばんなごんだ、お店でのティー・タイムは、オックスフォードからバスで20分、Woodstock(ウッドストック)のティールームでのひととき。
 Blenheim Palece(ブレナム・パレス)の裏門のそばにある店の名前は、The Blenheim。
ボタニカル・アートがプリントされたカーテンやクッション、チェックのテーブルクロス。暖炉棚には花が飾られ、壁にはドライフラワーのリース。
 そこでいただいたスコーンのアフタヌーン・ティー・セットとキュウカンバ・サンド(別に注文しました)は抜群の味わい。寒くないかと尋ねてくれたり、長居をしても会話の邪魔などいっさいなかった女性オーナーのやさしい心遣いとともに、記憶にはっきりと残っている。

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 さて今は日本にいて、英国の硬水で入れた紅茶とフレッシュミルクのミルクティーを懐かしんでいる。
さぁ湯を沸かして、Brooke Bondのオリジナルブレンドでミルクティーを入れようか。



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Wrote 10 April 2002 for Counter No.1234


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